【鬼滅の刃】神様の巫女 拾壱

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「いいか聞け。遊郭に潜入したら、まず俺の嫁を探せ。俺も鬼の情報を探るから」


着いた先は、藤の花の家紋を掲げる一軒の屋敷。
通された一室の上座にどかりと座って机に肘をついたクソ美丈夫は、当たり前のようにそう言った。
出された茶菓子をがっつく伊之助。行儀よくお茶を啜り、なぜか子供の落書きのような顔をしている炭治郎。私は伊之助が食べている茶菓子を一つ狙っていて、隣に座る善逸からはなぜか怒りに混じった空気を感じた。


「とんでもねぇ話だぁあ！！」

「あ？」

「善逸うるせー」


文句を言っても聞こえてすらいない。体を震わせる善逸の怒りの矛先は、間違いなくクソ美丈夫だった。バンバンと畳を叩きながら、善逸はそれはもう怒りに任せて喚き散らす。


「ふざけないで頂きたい！！ 自分の個人的な嫁探しに部下を使うとはァ！！」

「はあ！？ 何勘違いしてやがる！」

「いいや！ 言わせてもらおう！！」

「善逸！」


腐っても相手は上官。さすがにマズいと思った炭治郎が止めに入るが、善逸は止まることもなくクソ美丈夫を指差した。両目には大きな涙の雫がぶら下がっている。因みに、茶菓子はまだ奪えていない。


「あんたみたいに奇妙奇天烈な奴はモテないでしょうとも！ だがしかし！ 鬼殺隊員である俺達を、あんた嫁が欲しいからってぇ！！」

「馬鹿かテメェ！ 俺の嫁が遊郭に潜入して、鬼の情報収集に励んでんだよ！ 定期連絡が途絶えたから、俺も行くんだっての！」


……なんかこの二人、こう、なんだろう。沸点？ 怒り方？ 騒ぎ方？ が似てる気がする。因みに、茶菓子は奪えた。超美味しい。
怒り心頭のクソ美丈夫を、猪頭を頭に乗っけたまま眺める伊之助、善逸の羽織の袖を掴む炭治郎、胡散臭いものを見る目をした善逸。茶菓子を食べる私。


「…………そういう妄想をしていらっしゃるんでしょ？」

「ぐ、っふ……！」

「クソ餓鬼がっ……！！」


善逸の心底軽蔑したような声と言葉に、思わず咽せた。茶菓子が気管に入って死にかける私。だって今、妄想……妄想って……！ ウケる……！ 笑い死ぬ……！ その前に茶菓子に殺される……！！

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