【鬼滅の刃】神様の巫女 拾壱

＊ ページ43

煉瓦と鉄で造られ、電飾が照らす大きな門を潜った先に広がるのは、灯りが彩る夜の街。
紅葉が。屋敷が。柔らかで、けれどどこか蠱惑的な提灯の明かりに包まれて、通りを歩く人々は小綺麗な格好に身を包んでいた。
その街中を、人力車に乗った私達はがらがらと進んで行く。いやだ助けてほしい。
なんで助けてほしいかって、私の隣にはクソ美丈夫が座っているからである。その後ろの人力車に炭治郎、善逸、伊之助。

クソ美丈夫の隣とか嫌だ嫌だと駄々をこねてはみたものの、効果なんて皆無だった。炭治郎が私の身代わり(大変言い方が悪い)を申し出てくれたけど、なぜかムキになったクソ美丈夫が受け入れてくれなかった。それならばと、もう一台人力車をと言ってみたけどそれも却下。その分のお金は払うからと言っても却下。
私に向けられた視線からは明らかな“意地”を感じて、つまりは“こいつは俺の気に入りだから”だとか、“面白ぇ女。気に入ったぜ”とかでは断じてなく、“ここまで拒否られて折れてたまるか”って感じのやつ。つまりはくだらないプライドのせいで私は犠牲になったのである。……“プライド”なんて言葉久々に使ったな。多分。

気を紛らわせる為に、視線をクソ美丈夫とは逆の方に向けて精神の回復を図る。綺麗な髪飾りに整った顔。決して華やかではない着物を身に纏っているはずなのに、それでも隠しきれない色香を纏う女性達。なんて目の保養。精神衛生と回復に大変良い。


「いいかお前ら」


私の隣に座るクソ美丈夫が、腕を組みながら偉そうに何かを言っている。足が邪魔なので広げないでほしい。


「目立つことするんじゃねぇぞ。あくまで様子見だからな。絶対に車から降りるんじゃねぇぞ」

「……無理なことを」


思わず鼻で笑ってしまった。


「あ？ なんか言ったか？」

「すぐ分かりますよ」


物珍しい光景に辺りをきょろきょろする私達に、それは無理な相談だと思う。
しかも“目立つこと”も何も、髪色が目立つ私と善逸、見た目が目立つクソ美丈夫、それから何を仕出かすか分からない猪頭。目立つな、っていうのをちゃんと守れるのは炭治郎くらいじゃなかろうか。

キィ。音を立てて止まった人力車。目的地に到着した様子。
早々に降りたクソ美丈夫に続いて私も降りて、人力車を引いてくれた人にお礼を言う。

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す