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ひゅう、と掠れた息が喉を通り、体から体温が奪われていく。頭の中で兄さんが口にした言葉がぐるぐる回って頭が痛くなった。
「なぁに、どうしたの? 本当の事でしょ? 何今更、そんな驚いた顔してるの?」
……事実、だ。兄さんの言う通り、私があの二人と血が繋がっていないのは事実。養子なのも事実。でも、それでも、私はあの二人を赤の他人と思った事は一度もない。確かに血の繋がりが無い時点で他人かもしれないけれど、私はそう思った事なんて一度たりとも無い。
「私は、あの二人を他人だなんて思った事、一度もない」
「へえ。まあそうだろうとは思ったけど」
「それに、そんな事言ったら私と兄さんだって、他人だって事に──」
ガッ。顔を両手で掴まれて、目の前には兄さんの顔。爛々とした双眸は、血を零したように赤かった。
「──そんなわけないでしょ」
底冷えするかのような低い声は、形の良い唇から吐き出された。私の顔を掴む手はぎりぎりと力が込められて、みし、と骨が嫌な音を立てた。いたい。呟いた声は、兄さんに聞こえたのだろうか。
「俺とAが赤の他人だなんて、まさか本気で言ってるわけじゃないよね? さっき俺が言った事もう忘れちゃった? 俺と、Aは、兄妹。兄と妹。わかる? 赤の他人だなんてそんなわけないでしょ? 俺はAの兄。お兄ちゃん。だからAの事は何でも知る権利があるし、知らなきゃいけない。何かを最初に与えるのは俺じゃないといけないの。“前”にも言ったよね? 覚えてない?」
…………ああ、やっぱりなぁ。
ぎりぎりと力が込もる兄さんの手の感触に痛みを覚えながら、どこか呆然と頭の隅で呟いた。やっぱり、違う。炭治郎とは違う。炭治郎と禰󠄀豆子ちゃんの様な純粋で尊い関係とは、全く違う。
分かっていたのだ。分かっていたとも。あの二人と私達は、同じ兄妹でも在り方が違うのだと。分かっていたからこそ、あの兄妹が羨ましかった。きっと、私の理想とした兄妹だった。
その理想を映し出したのがあの夢だ。あの夢の中の兄さんだ。夢の中の兄さんは、私を妹だと思ってくれこそすれ、こんな視線は向けてこなかった。こんなドロドロした独占欲を持ち合わせてはいなかった。
……現実なんて、結局こんなものか。
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ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» たくさんコメントありがとうございます!!嬉しい!!やっとこさ本格的に遊郭編に入りました!宇髄さんと絡ませるの楽しいので、もっと沢山絡ませたい欲が…ぐへへ…。いつもありがとうございます!励みになりますー!! (2022年11月7日 22時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - もう何回のコメントしてすいません!だけど!私の脳がテンションを抑えきれなくてッ!アァァァッッ本格的に遊郭編突入!楽しみでしかない…✨✨文章がっ、溢れ出るこの文才…✨主ちゃんが可愛すぎます…宇隨さんとの絡み最高です!更新頑張ってください! (2022年11月7日 22時) (レス) @page48 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!!やっと宇髄さん出せました!!これから遊郭編頑張っていきますー!!いいですよね宇髄さん。これからたくさん夢主に絡ませるぞ!嬉しいお言葉を文字数いっぱい…いつもありがとうございます…!これからも宜しくお願いしますー!! (2022年10月26日 2時) (レス) @page42 id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
莉久 - 久しぶりの更新有難う御座いますッッッ寝る前に読もうとしたらテンション爆上がりなりました!!!⤴主ちゃん遊郭編楽しみだなー!やっぱ宇髄さんのキャラいいわぁ…好きィ(^^ω)毎回話の内容の尊さに悶え 、文才の差を噛み締めております。続き楽しみです!…字数ゥッ (2022年10月26日 0時) (レス) @page42 id: 28e45e7c9c (このIDを非表示/違反報告)
ユズヒ(プロフ) - 莉久さん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉の数々、ベッドの上で転げ回りながら感受致しました!本当にありがとうございます…!マイペースなノロノロ更新ですが、末永くお付き合い頂ければ幸いです〜!! (2022年9月27日 0時) (レス) id: 717d8ad01f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユズヒ | 作者ホームページ:
作成日時:2021年12月20日 0時