episode 4 ページ14
「ふぃー……今日もお疲れ、小夏」
『遅いです。……私情しかない依頼でも受けるんですね』
「報酬も弾むからねぇ。生きていくには金だよ。はいこれリボン」
仕事のノルマを終わらせた事を報告する為に猫に戻っている小夏を腕に抱えて事務所へ歩く。稀なケースの者であり所々の神と知り合いであるが故に、事務所までの道中は好奇の目で見られる事が多い。当初は偏見にまみれた暴力やら暴言やらで溢れかえっていたが、負けじと必死に積み上げた実績と共に更に名が知れ渡った今ではそんな愚行を働いてくる者はいなかった。
「帰りましたー」
『ナンバー281 戻りました』
「いつものごとく堅苦しいねぇ」
事務所の扉が開く。しかしいつもなら明るく照らされているはずの廊下は真っ暗で、どうやら誰もいないらしい。
奥から2番目の部屋に入るなりベッドに飛び込む。小夏は部屋に入った瞬間に自分のベッドへ走った。
「疲れた……何であの上司いないの」
『トイとフェルの所に依頼の詳細聞きに行ってますよ』
「新しい死神が俺の元に研修しに来る話?」
『そうですね、半分はフェルの機嫌取りですけど』
相手がイタズラ目的の依頼を持ちかけて、時間の無駄になったりしないように──この世界にもちゃんと仲介役は存在する。事務所へ仕事の依頼が来る半分は、この事務所の場合は悪魔の“トイ”と“フェル”が持ち込んできている。
トイは控えめで引っ込み思案な一方、フェルはだいぶ我儘な上に少し傲慢な部分があり、たまにこうして機嫌を取りに行っている。しかし、双子だからなのかトイもまれに我儘を言い出すらしい。
名前は聞いていても姿も何も見たことないこちらとしては大変さはあまり分からないものの、機嫌を取りに行っている日は必ず疲れて帰ってくる為同情してしまう。
「あ、帰ってきた」
『私はもうここで寝てますから、さっさと済ませてください』
「はいはい」
建物の前に気配を感じ部屋を出ると、ちょうど上司が入ってきている所だった。
「お疲れ様です、翠蓮さん」
「おう。相変わらずフェルは我儘な奴だった」
彼が指を鳴らすと同時に明かりが点く。
最初の頃こそ、スイッチが無くて慌てていた所に指パッチンで明るくなる事に驚いていたしかっこいいとも思っていた。
今となっては見慣れた光景だが、それでも疲れていると驚くことがある。
部屋に着くと、椅子に座ったところで書類を渡す。
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シャル@如月唯奈(プロフ) - ハジメマシテ!ULOGから来ました、シャルといいます。小説めちゃめちゃ面白かったです!文章の書き方とか世界観とかめちゃめちゃ好みで、ドンドン読んじゃいました(笑)これからも頑張ってください、応援してます! (2020年1月18日 22時) (レス) id: 6e2bf13c08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:天楽 | 作者ホームページ:
作成日時:2019年6月25日 23時