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「Aせんぱーい!」
『春奈。どしたの』
玄関口に着いた頃、春奈がこちらに小走りで駆けよってきた。
危ないぞ春奈、廊下を走るなって教わっただろう。
「私、雷門イレブンのファンになっちゃって!てか、A先輩のファンになっちゃいました!
帝国戦のA先輩、とってもかっこよかったです!」
『あ、ありがとう。でも、本当にたまたまだったし…』
「何言ってるんですか!
このカメラに先輩の雄姿はすかさず残ってます!後で見ますか?」
『いや、それは恥ずかしいから却下』
実は昨日撮った試合映像もまだ見れていない。
疲れたっていうのもあるけど、自分がいると思うとちょっと恥ずかしくれ見れてない。
『それで春奈、今日もサッカー部に取材に行くの?』
「いいえ!今日は練習を見学に行こうと思って!」
意気揚々と話す春奈に、若干私の体は引き気味になっていた。
『じゃ、じゃあ今から河川敷に行くところなんだけど、一緒に行く?』
「はいっ!」
・
―河川敷―
『秋、ごめん遅れた!』
「ううん、大丈夫よ。…あれ、貴女は新聞部の…」
「はいっ!練習の見学に来ました!」
河川敷につくと、やはり既にみんなは練習を始めていた。
…けど、なんか…
『…秋、なんだか雰囲気悪くない?』
「うん、ちょっと染岡君が…」
染岡?
彼に視線をやると、その表情はいつもよりピリピリしているのが目に見てわかった。
「次の試合も決まったのに、心配ね…」
『あ、そうそうその話!ね、次はどこと戦うの?』
「尾刈斗中よ」
『!尾刈斗中って…あの、尾刈斗中…?』
尾刈斗中の名前を聞くと、隣にいた春奈も表情を曇らせた。
秋の話によると、理事長の娘、雷門夏未さんが次の試合の相手を組んでくれたのだという。
勿論、今回も負ければ廃部という条件付きで。けど、勝てばFFへの出場を認めてくれるらしい。
「二人とも、尾刈斗中を知ってるの?」
「結構巷では有名なんですよ、尾刈斗中のこわーい噂!」
怖い噂?と秋は首を傾げた。
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作者名:白 | 作成日時:2021年11月7日 20時