第二十一話「逢引逮捕」 ページ22
「おまたせしました。」
彼が逢引をしようと話を持ちかけてきた日から約三十五時間。私は今日彼が来るとは思わず、いつも通りの服装で優雅に珈琲を飲みながら新しい小説シリーズを読んでいた。が。
突然の彼の参上に私は衝撃を隠せず「ブッ」と綺麗な放物線を描きながら珈琲を吐き出したのである。
「Aさん、デートをしますよ。」
「え、いつもみたいに私を待たせるんじゃないの?嘘でしょ?自分の時だけ都合良くない貴方?」
「真逆、貴女を待たせるなんて。紳士の風上にも置けない。」
「私は貴方の事を紳士と思った事無いけれど。」
彼は持っていたハンカチを取り出し、まるで子供を相手するかの様に優しく私の汚れた口元を拭く。そして私の手を引き「行きましょう。」といつも通りの微笑んだ顔で言うのであった。
「此処の洋服屋、気になっていたんです。」
先ず最初に着いた店は彼の趣味なのか分からないが、高級そうな紳士服の店だった。完全にデートで来る店では無いが此処で私は考えた。
彼は目が見えないので、どういう服が良いのか私に見てもらおうと思ったのだろうか?私は彼に似合いそうな服を選び、話しかける。
「条野さn」
「此処のオーナーは麻薬の取引の常習犯だそうで。」
条野さんは服には一切興味を持つ様子を見せず、店のオーナーの手首に手錠を掛けた。すると店の入口から警察が大勢入って来てオーナーを連れてパトカーへと消えていった。
「え、あの。」
「ずっと前から様子を伺ってたんです。いやぁ、貴女のお陰で勘づかれずに済みました。」
そうか、条野さんがやりたいのは逢引きでも、密か(ターゲットである犯罪者)に交際関係である(と、偽装してバレずに)二人が(協力して犯人に)会うという彼ならではの逢引なのだと考えた。
私はただその場で立ち尽くし、持っていた服を地面に落としてしまった。
「さぁ、次のお店に行きましょうか。」
「此処のスイーツ美味しいわ。」
「逮捕。」
「此処中々風情があって良いじゃない。」
「逮捕。」
「あの着ぐるみ人気ね。」
「逮捕。」
「逢引とは?」
「…これは逢引では無いのですか?」
「否、ただの逮捕劇だわ。」
午後四時をまわり、横浜の街を眺める観覧車に二人、私と条野さんは静かになんの面白味の無い顔で乗っていた。
「可笑しいですね。素敵なプランだと思ったのに。」
「否、確かに軍警にとっては素敵なプランなのだろうけれど。」
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時