第十五話「えらいえらい」 ページ16
「ずっと待ってくれていたんですね。Aさん。私嬉しいです。」
「報酬を受け取っていなかったもの。これでこの関係はもうお終い。報酬早く頂戴。」
席に座り直し、二人肩を並べ少し久し振りの会話をする。連絡手段を持っていなかった為、待ち合わせ等できなかったのである。
「報酬は私♡」
と、可愛いポーズで私にそういう彼をぶん殴ってやろうと撃たれた肩の逆の腕を思いっきり彼にぶつけようとするが容易く受け取られてしまった。
「…怪我はまだ痛みますか?」
「ええ、でも日常に異常をきたす程では無いわ。元気よ。」
「その位の虚勢を張れるのであれば結構。」
見破られてしまった。そう、腕は撃たれてから痛みは日に日に引いていくものの、矢張り痛いものは痛い。小説を読む時も少し痛みが走って物語に集中出来ないのである。
「報酬のお金です。貯めるなりなんなりと。」
「感謝致します。ほら、帰った帰った。」
この会話を聞いた彼は「フフ。」と静かに笑ったのである。その反応に条野さんは不思議そうな表情を浮かべる。
「いえ、彼女貴方を本当に肩の手術をした後からずっと貴方を開店時間から閉店時間まで毎日この席を立たずに待っていたもので。本当にその会話だけで良いのか?と思い。」
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙と頭の中で奇声が充満したのである。
「ほう、興味深い。つまり貴女は私の事を想いながらずゥーっとこの場から離れずに待ってくれていたのですね?口ではああ言ったものの?」
面白がった表情で私の反応を楽しむ条野に「違う!止めて!!」と、咄嗟に嘘をつくが直ぐにバレてまた笑われる。恥ずかしい。こんなの初めてである。顔が熱い。
「本当は早く来る予定でしたが、思いの外仕事が溜まっていましてね。同僚にも手を焼いて。すみませんでした。」
と、深く頭を下げる彼。私は「別に私はオーナーの珈琲を飲めたので別に。」とまたも嘘をついたのである。
「で?Aさんの愚痴は?」
「へ?」
嗚呼、そういえば別れ際言ってやろうと思っていたな。でも今は別にどうでもいいわ。彼の顔を見れて満足。
ん?彼の顔を見て満足?
「私を返して。」
「私は貴方を拐った覚えはありませんが。」
「今までの私を返して!!こんな事思った事ないの!以前の私を返して!」
「思った事がない?それはつまり?」
「良いから返せー!!」
こうして、私の日常は戻る所か少しずつ壊れていくのであった。
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肉塊(プロフ) - 冬斗さん» わーいありがとうございます〜もっと頭悪い小説にするので何卒〜 (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - そう言っていただいて嬉しいです…!作品いつも楽しく読ませて貰ってます! (2022年7月28日 10時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
肉塊(プロフ) - 冬斗さん» いや草。誤字の指摘、ありがとうございます。あと自信を持って下さい。何回も謝る様な事貴方様言ってませんよ( 'ч' ) (2022年7月28日 10時) (レス) id: 9c26b5fd8b (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - なってしまいます。うぅ…文章が長くなってしまいすいません…失礼しました… (2022年7月28日 9時) (レス) id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
冬斗(プロフ) - すいません…自分なんかが初コメでおこがましいと思いますが、第四十七話の「再会」の最後の方で『あの時は彼が』の後が『鮭の飲み過ぎ』になっていました。恐らく『酒の飲み過ぎ』だと思います。このままでは夢主の中で、条野さんがしゃけを飲んで酔う人に (2022年7月28日 9時) (レス) @page49 id: 2506e918c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:肉塊 | 作成日時:2021年9月24日 3時