[番外] 君が死んだ日から進まない 1/2 ページ22
F side story
これは昔の話。
20年前、俺には恋人がいた。
同じアイドルグループのメンバーで、デビュー前からずっと二人で支えあってきた。恋人であり戦友でもある唯一無二の存在。
北山宏光。
恥ずかしくて本人の前では言えることは少なかったけど、たぶんあいつも同じ気持ちだったと思う。
そして、とても幸せだった…。
絶対に公にできない関係。会える場所は制限されていたから、仕事以外で会うのはお互いの家が多かった。
俺の部屋なのに自分の部屋のように寛ぐ北山がどうしようもなく愛しい気持ちにさせてくれたし、朝日を感じて目覚めれば、横でマヌケな顔して寝ている童顔がいて、それでホッコリした気持ちでもう一度夢の世界に飛び込むんだ。
小さなことにも幸せを感じれるのが不思議なくらい日常が満たされていた。
30歳になっても、40歳になっても、隣でその笑顔を見れるという現実が最高な気分にさせてくれる。
しかしそんな現実は、ある日突然砕かれた。
付き合い始めて何度目かの俺の誕生日。食事をしに行って、少し口論になって、そのまま帰路についた。
別にいつものことだ。気にするほどのことではない。
北山は次の日仕事が休みだったから、翌日に適当なメールを送った。しかし返信が返って来ない。俺のとりとめのないメールに返して来ないことは珍しいことでもないが、一応口論の後だったので気にはしていた。
(明日、家に行く予定だしいっか…)
そこからの記憶は曖昧で、よく、思い出せない。
確かなのは、俺が合鍵を使って北山の家の玄関を開けたところまで。
少ししてからメンバーに当時のことを訊ねると、少し焦ったように『思い出す必要はない』と皆口々に言った。
そして二週間後、"北山の体内に残っていた犯人の体液から、犯人を特定することができた"と警察から聞かされた。
死にたくなった。
後悔に包まれて、嘔吐を繰り返した。
愛情が襲ってきて、涙が出てきた。
厭悪が湧いて、手足が震えた。
喪失感に気づいて、呼吸ができなくなった。
感情の波がループのように何度も何度も繰り返された。
もう何をどうすればいいか分からなかった。
さっきまで楽屋にいたはずなのに、目を覚ませばそこは病院のベットで。
気づいたら記者たちの前に立って、用意された内容を繕った表情で読み上げていて。
その頃はもう何もどうにもできなかった。
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daimomm(プロフ) - 紅葉ぽてぽてさん、こんにちは。またお邪魔してきました。何回目かなぁ。大好きなお話。毎回みっくんの正体がわかったところから号泣必至です。また地縛霊みっくんに逢いたくなったら来ますね。 (2019年9月22日 9時) (
レス) id: a9155c8926 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉ぽてぽて(プロフ) - りんちゃさん» りんちゃさん、感想ありがとうございますー！！ わわーー！勿体ないお言葉ですっ！泣いていただけたなんて…書き手冥利に尽きますっ！！ まだ連載中の物もありますので、今後とも、どうぞ良しなに(*´ω｀*) (2018年4月24日 20時) (レス) id: bb26a8e9d1 (このIDを非表示/違反報告)
りんちゃ(プロフ) - はじめまして。紅葉ぽてぽてさんの小説を初めて読ませて頂いたのですが、文章も読みやすくてどれも面白いし、素敵なお話でした。彼が死んだ日を探す旅はタイトルにつられて読んだのですが感動してぼろぼろ泣いてしまいました笑 (2018年4月24日 1時) (レス) id: fdb9918149 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉ぽてぽて(プロフ) - daimommさん» 実は初期の段階で玉北エンドも考えていたんですが、しかしなにせ20年待ち続けてる藤ヶ谷さんがいらっしゃったので、今作では藤ヶ谷さんに軍配が上がりました。最後まで読んでくださってありがとうございます！ (2018年2月24日 17時) (レス) id: 55d0077256 (このIDを非表示/違反報告)
紅葉ぽてぽて(プロフ) - daimommさん» daimommさん、感想ありがとうございます！私も藤北の生活を書きたかったです。この藤ヶ谷さんは人気俳優なので、撮影現場に連れて行ってもらった北山さんがうっかりカメラに映り込んでしまって本物の心霊映像が出来あがっちゃったり…妄想は膨らむばかりです笑 (2018年2月24日 16時) (レス) id: 55d0077256 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紅葉ぽてぽて | 作成日時：2017年3月17日 4時
