24. ページ24
.
──side YOU──
父親の画家としての名前も知らなかった。
何度か本名で検索したことはあったけど、それで情報が出て来るはずなんてなかったんだ。
泉 海秀
苗字と名前の一部に『海』を足した三文字を見て、それが父だと確信した。
.
「何か分かれば俺に連絡来ることになってるから。
しっかしビックリしたわー。やっぱり親子だと絵のタッチも似るんだね」
翌日広島から戻ってきた祐也くんは、嬉しそうにタブレットで泉海秀の絵を見ている。
父の居場所が分かって会える時がこれから来るんだろうか。
会いたい半面、父が既に再婚しているのでは無いかという恐さはやっぱりあった。
「大丈夫だよ。
万が一新しい家族がいたとしたってAのことを大事に思ってるのは間違いないんだから。
じゃなきゃ、定期的に絵ハガキなんて送って来ないっしょ」
祐也くんの両腕がそっと身体を包み込む。
「それまでは俺がそばにいるから。
いや、その後もずっと離れないけど」
伝わってくる体温が心地よくてそのまま身を預ける。
ずっとこうしててほしい。
結局祐也くんから離れる事なんて出来なかった。
高校卒業したら1人で生きて行くなんて思ってたけど、きっと今みたいに祐也くんに頼りっぱなしで、もし父と会うことが出来たら父にも頼っ
てしまうだろう。
私は凄く弱い人間だから。
「Aはもっとわがまま言って甘えたっていいんだよ。
俺はそんなAも見てみたい」
そう言っていつもより強めのキスをしてくるから、余計に離れたくなくなる。
『今日は帰りたくない』
「いいよ。俺も帰したくないし」
祐也くんの首に腕を回すと、苦しいくらいに抱きしめられた。
『祐也くん、私…こういうこと、初めてで…』
明かりが消えた部屋の中で、月の白い光がうっすらと祐也くんの引き締まった身体を照らす。
「怖い？」
首を横に振ると、髪を優しく撫でられる。
「大丈夫だよ。俺に任せて」
それはまるで、これからの人生全て任せてと言われているみたいで、涙が溢れてくる。
『大好き…』
「俺も、大好きだよ。A」
覆い被さる彼の身体の重みを幸せいっぱいで受け止めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なのはなさいた(プロフ) - 初めて読ませて頂きました！すごく面白いです！楽しませていただいてありがとうございます！！ (2020年6月5日 0時) (
レス) id: 9a9c48371e (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - 大変失礼致しました。 (2020年5月9日 20時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - ラークさん» 申し訳ありませんが、そちらの作品は私の作品ではございません。 (2020年5月9日 18時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
ラーク(プロフ) - こちらからすみません。Secret Love、シゲアキ先生と恋をします、のパスワードを教えていただけますか？よろしくお願いします。 (2020年5月9日 17時) (レス) id: bda1f630a7 (このIDを非表示/違反報告)
まり(プロフ) - 彩耶さん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！また機会があればよろしくお願いします。 (2020年3月10日 2時) (レス) id: fa3c703b69 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まり
| 作成日時：2020年2月10日 13時
