【オリジナル】それだけ。

それだけ。 ページ5

着替えを、取り出す。

服は、私にとってはグッズ収集のひとつ。
大抵アニメのコラボTシャツやパーカーで、埋め尽くされる。



夏はジーンズにTシャツ。それだけ。
スカートは、はかない。ジーンズが好きだから。
動きやすいから。私に一番似合っているから。
スカートは、似合わないから。


違う。
スカートを履き、"女"を出すのが嫌だから。
心底恐ろしい。"女"特有のものを身につけると、
私を否定されたような気になってしまうのだ。

化粧も、そうだ。
化粧をして顔を変えてしまうことが、心底恐ろしい。もう二度と人前で、化粧を取れなくなってしまう気がして。
いや、本心は面倒なだけかもしれない。それだけ。



私は、羨ましい。"女"、"男"で生きない人が、羨ましい。
このような事を一々考えずに好きな格好をし、
一々世間に振り回されずに好きな事をし、
一々疑問に思わず好きな生き方をする。

こんな人達が、羨ましい。



私は、尊敬する。"女"として生きる人達を、尊敬する。
私は決して、お洒落をする人や化粧をする人を非難したり、軽蔑したわけではない。尊敬しているのだ。

このような事を一々考えずに自分のもつ美しさを最大限に発揮し、
一々世間に振り回されずに美を追求し、
一々疑問に思わずに素敵な女性を目指そうと努力する。

こんな人達を、尊敬する。



私は、"女"にも、"自分"にもなれなかった。



さあ、今日は某海賊王のTシャツを着ようか？
奇妙な冒険をするネックレスをつけようか？
この前買ったカッコいいイヤリング。
どんなジーンズを履こうか？


クローゼットに、スカートは見当たらない。

数ヶ月前に買った化粧品は、うっすら埃が積もっている。







それだけ。

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