72話 ページ28
ずっと境界にいた私はついにあの世の門に足をつけた。途端、後ろにあったこの世の道が音を立てて崩落する。なるほど、こうなるから死んだ人は現世に戻れなかったのね。母が死んで妹と沢山泣きじゃくっていた幼少期時代を少しだけ思い出した。
？「……A？Aなの？」
突然後ろから誰かに名前を呼ばれる。その声が私のよく知る声で。そして数年ぶりに聞く優しい声。振り返らずともすぐに分かった。
…私たち双子のお母さんだ。
貴「お母さん…っ！」
母「やっぱりAだったのね。私が死んじゃった時はまだこんなに小さかったのに、随分と大きく成長したのね。でも…ここにいるってことは、もしかして…」
貴「うん。私もついさっき死んじゃったみたいなんだ」
母「そう…。ごめんね、まだまだ生きたかったでしょうに、Aを元気に産んであげられなかったから…」
貴「謝らないでよ、お母さん。確かに私の人生は普通の人と比べたら余りにも短すぎたかもしれない。でもね、たったの数ヶ月の間だったけど、すっごい充実した人生を送れたんだよ！だからもう充分！これからはこっち側で生きる者として下界の皆を見守ることにする」
傍で焦凍くんがプロヒーローとして活躍する姿を見られないのは凄く残念だけれど、ここからだってその様子は充分に眺められるだろうし、殉職とかをしない限り大体八十年後くらいだろうけど、焦凍くんたちだっていつかはこっちの世界にやってくる。その時はまた、沢山私の知らない話が聞けたらいいな。
迎えに来てくれたお母さんと一緒に前へ前へと前進する。ごめんね、焦凍くん。ごめんね、妹。…ごめん、A組の皆。
天国で待ってるからね。でも、殉職はなるべくしないで。早く再会したいのはやまやまだけど、どうか私の分まで長生きしてね。
貴「ありがとう。……大好き」
目の前に広がる草原を見つめ、振り返ることもなく更に歩みを進めた。
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レーズン(プロフ) - ユリの花さん» コメントありがとうございます！感動してもらえて良かったです…！ハンカチをどうぞ！(？？)3部も更新始まりましたので、是非最後まで宜しくお願いします ー！ (2021年8月23日 22時) (
レス) id: ec6c9ca54e (このIDを非表示/違反報告)
ユリの花(プロフ) - もう途中から泣きながら読んでました…。続きが楽しみです。頑張って下さい！ (2021年8月23日 0時) (レス) id: 871fb938ae (このIDを非表示/違反報告)
レーズン(プロフ) - あいのみさん» コメントありがとうございます！うわああああハンカチをどうぞ！(？？)好き嫌い別れそうなこの作品をここまで読んでくださり本当に嬉しいです…！でもまだ3部がありますので、もし良ければ3部の方も宜しくお願いしますっ！！ (2021年8月22日 23時) (レス) id: ec6c9ca54e (このIDを非表示/違反報告)
レーズン(プロフ) - なつみさん» コメントありがとうございます！あっやっぱり書いてた方がいいですかね！？生きるのか否か予想しながら読む人もいるかと思って「好き嫌い別れます」とだけ書いてたんですが…そうですよね、はっきり書いた方が分かりやすいですからね…！ご指摘もありがとうございます。 (2021年8月22日 23時) (レス) id: ec6c9ca54e (このIDを非表示/違反報告)
レーズン(プロフ) - 浜辺海さん» コメントありがとうございます！予想してくださってるの凄く嬉しいです！ネタバレになるので詳しくは言えないのですが、何があるかは是非3部で確認して頂けたらと思います！読んで下さり本当にありがとうございます！！ (2021年8月22日 23時) (レス) id: ec6c9ca54e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レーズン | 作成日時：2021年8月21日 23時
