命にキスを 〜アウトローな未来のお話〜

十 ページ10

キャテットは馬肉を出してくれるレストランが多くある。ホースインハンバーガー、ココリ(馬肉を置いているチェーン店、アメリカに全二十店舗あるがキャテットには二店舗もある)、グリーンカフェ……、数えだしたらキリがない。俺とキャロルは馬肉が好きという共通点があるので早速ココリに行った。

　俺は馬肉ソーセージのサンドウィッチとコーヒー、キャロルは馬肉ソーセージが入ったホットドックとカフェオレを頼んだ。夜だったので客はそれほどいないが、近所の若者らしき高校生カップルが一組、携帯と睨み合いっこをして隅っこの方に座っていた。時刻は深夜二十五時を回っているが、大丈夫なのだろうか。

　俺達は町が見える窓側の席に座った。キャロルは入口に新聞があったのを思い出し、席を外した。俺は先に出てきたコーヒーをすすって窓の外を見ていた。此処は雪がちらつくぐらいで、吹雪にはならないらしい。車が通るのを見て、人差し指をとんと動かす。俺が席について車が十四
も通ったが、一向にサンドウィッチとホットドックが来る気配はない。

　十分後、キャロルは俺の袖口を少し引っ張っり、新聞を回転させ、ある記事をテーブル越しに見せてきた。キャロルは人差し指で俺は目で文字を追った。

「果たしてこれは？ 二十三日夜、アメリカ国立病院で赤ん坊が作れるカプセル(機械)を開封した。生産率は九十四％と非常に高くカスタル夫妻は口を揃えて嬉しいですとコメント。だが、産まれてきた子供はなんと……」

　俺は言葉を止めた。肝を潰した。
　言葉に出来なかった。ああ。七年間考えたくもなかった事だった。

　太ったウェイトレスが隣にサンドウィッチとホットドックを置いてぶっきらぼうに厨房へ戻って行った。キャロルは≪sheep≫という文字に人差し指を止めたまま俺の目をじっと見ていた。時間が止まったかのように見えた。

「おい、嘘だろ。だって……」絞ってようやく出た声。
「奴等はクソよ。iPS細胞スリーの恐ろしさも知らないで生命を作り出そうとするなんて、クソ以下よ。人間じゃない!!」

　新聞の白黒のイラストは、人間に羊頭、羊足がくっつけられていたものだった。


　羊の胎盤を使ったのか？


　この子をこれからどうするつもりなのだろう。


　どうやって生かせる？



　もしくは――。


　キャロルの目は怒気に満ち溢れていた。叫んだ言葉はココリに響き渡り、俺の心は戸惑いに変わっていた。

十一　キャロルの激怒→←九　ケーキを買った後、高速

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