【銀/魂】戦場を嫌う黒い鬼 弐【坂/田/銀/時】

チョコレートが七十九個 ページ36

トシと手を繋ぎ、見慣れた道を歩く。先程よりも気温が下がったのか、吐く息が白くなっていた。

トシと繋いでないほうの手がかじかみ、感覚も麻痺してきた頃、空から綿毛が降ってきた。それは白く小粒で、ふわふわと私の手のひらに舞い降りた。

その綿毛はとても冷たく、手のひらに舞い降りた瞬間、フッと水に変わってしまった。


「わぁ！ 雪だ！！」


別にこの地域に雪が降ることは初めてではないし、初めて見るわけでもない。

しかし、今年の初雪で、しかもこの時期にしか見ることが出来ないということもあり、幼かった私はさっきまでの寒さなど忘れて雪にはしゃいでいた。


「どおりで今日は別格冷えるわけだなぁ！」


為五郎兄さんも久しぶりの雪にテンションが上がっていたのか、白い歯を見せて笑っていた。


「2人とも、そろそろ家へ帰ろう。このままだと風邪引いちまうからな」

「為五郎兄さん！ もう少しだけ……だめ？」

「だめ？」


兄さんを見上げて聞き、トシも続く。久しぶりの雪なのだ。もう少し外で遊びたい。

それでも兄さんは駄目だ、とキッパリ言って風邪を引いてもいいのか？と続ける。


「風邪は引きたくない……」

「引きたくなーい！」


先にトシが言い、私もトシの言葉を反復する。けれど、このまま帰るというのもどこか勿体ない気がするのだ。


「また明日遊べば良いさ。明日には雪も止むだろうし、雪も積もってるかもしれないぞ？」


そう言って兄さんは家へと進行方向を変えた。私とトシはまだ不満を持っていたが、彼に迷惑をかけるのは不本意なため大人しく従った。



それから数時間後。

家の中からふと外の景色はどうなったかと見れば、雪は未だにしとしとと降っており、辺り一面雪景色へと変化を遂げていた。

私は急いで兄さんとトシがいる部屋へと向かい、興奮した声音で叫んだ。


「兄さん兄さん！！ お外、いっぱい積もったよ？ 遊んできちゃだめ？」


兄さんはどれどれー？と確認し、困ったように笑ってから──


「まだ雪が降ってるだろ？ 雪が止んで、太陽さんが顔を出したら外に出て良いからな。それまでは絶対外に出ちゃ駄目だぞ」


と優しく注意をした。その時、兄さんの奥さんが彼を呼ぶ声がした。彼は「いい子で待ってろよ」と念を押してから奥さんの元へと消えていった。

トシは「うんっ！」と元気よく返事をしたが、私は外の景色にボーっと見とれていた。

目線を外から家の中に戻し、近くに兄さんが居ないことを確認する。そして、トシに向かって──


「ねぇ、ちょっとだけ外に出てみない？」


と悪戯な笑みを浮かべた。

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あずきいろ

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誰かのもんじゃ

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