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北信介side
屋上。
侑「それで…北さん。虹はどないしたんです？」
「俺は、…何も知らんのや。何も聞いてへん。あいつは、何も、言わなかった。俺には、何も。」
俺だけ、やったんか？これから先は、ずっと一緒に居れると思っとったんは。
俺、だけ、…
治「北さん。前、言うてはりましたよね。虹ちゃんの家族が殺されたって。何故、虹ちゃんの家族は殺されたんです？誰に、殺されたんですか？」
侑「なんやそれ。俺、初めて聞いたで…。」
角名「俺も。」
「俺も、詳しくは知らん。婆ちゃんに聞いたんや。10年前、俺がまだ小学生の時や。前に言ったやろ、俺と虹は幼馴染やって。あっちの家族とも仲良くてな。お互いの家によく遊びに行き合ってん。その日もいつも通りに過ごしとった。なのにあいつは、居なくなったんや、突然、な。」
侑「そ、そんな…」
「朝、いつも通り待ち合わせの場所にも、学校にも来おへん。それで帰って婆ちゃんに、あいつの家族は殺された。あいつだけが居なくなったって聞いたんよ。俺が知ってるのは本当にそれだけや。」
そうや。まだ聞いてへん。
なんで、虹の家族が殺されたのか。
なんで、あいつだけが、取り残されたのか。
俺はまだ、聞いてない。
虹から聞いた、衝撃の話。
呪術師と、呪霊というもの。
まだ、頭の中では理解が追いついていなかった。
あまりにも、非現実的すぎて。
侑「じゃあ、あいつ…一人ぼっちなんですね。」
侑が、目をうるうるさせながらそう言った。
ひとり、ぼっち？
そうや。あいつは、一人、なんや。
大事な家族が殺されて、あいつは、誰といた？ずっと、一人なのか？
誰が、守ってくれる？誰が、そばにいてくれる？
10歳にもならん子供がそんな状況に、耐えられるか。
その重さに、深刻さに俺は今まで、気づけなかった。
それなのに俺は、自分勝手な言葉と行動をしてしまった。
あいつが俺に冷たく接した理由。
なにか、あるからや。
俺は、ちゃんと考えたことがあるやろか。
家族が殺された。なのに、あいつだけ殺されなかった。
その理由。そしてその時のあいつの気持ち。
あいつは、感情を失くしたんやない。捨てたんや。
自分が呪術師というものになるために、強くなる為に。
本当俺は、馬鹿や。
会えた嬉しさで一杯になりすぎて、見えていなかった。
すまん。虹。
それでも、俺はそばに居りたい。
会いたいんや。
わがままをどうか許してほしい。
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作者名：杏 | 作成日時：2021年12月6日 13時
