瞳 ページ15
「虹〜おつかれ！遅かったね！」
『五条先生…ただいま戻りました。』
「うんうん！はい！」
五条先生が手を差し出す。
『えっと…』
「ん？あれ？僕のおつかいは？」
『すみません。ちょっと忘れてしまいました。』
「…………え？」
『おつかいの存在を忘れてしまいました。』
「………………………え？」
『え？』
「え？」
＊
それから30分、私は五条先生の甘いものに対する熱意の語りを聞かされた。
「わかってくれた？」
『はい。』
「ならいいよ。伊地知に頼もうかな。」
ごめんなさい。伊地知さん。
「それじゃあ、ちょっと僕と話そうか。」
『いや、もう気持ちは充分に伝わりました。』
「いやもうそれはいいから。キミの話、ね。」
私の話？
『何のこと…ですか。』
「その"瞳"。コントロール、できるようになった？」
『！』
「君は、強い。僕よりは弱いけど、いつか僕を超えるかもしれない。それほどの強さを持っている。それは、僕だけでなく、上も認めているくらいにね。それは、守るだけでなく、脅威にもなる。それはわかる？」
『…はい。』
そう。そうだ。この力、この目のせいで、私は、…
大切なものを、人を、失ってきた。
「虹はさ、その力、術式をあまり使わないよね。それでも充分強いけど。どうして、使わないの？」
『……から。』
「ん？」
『こわい、から、です。』
「何が、怖いの？」
『もし、知られて…離れてしまったら。いなくなって、しまったら、…。』
「…それは、高専のみんな？」
『そ、…です。』
「…違うでしょ。」
『！』
ちがく、ない。
「大丈夫、真希達はみんな、虹の味方、仲間だよ。君が恐れているのは、幼馴染の子だろ？」
何で、知ってるの。
『そう…ですね。でも、もう。彼には会いません。』
「どうして？」
『私と彼は、住む世界が違いすぎる。私はこんなにも、血に塗れてしまった。人も殺したことある。彼の隣に立つ資格も、自信もありません。』
「そう思っているのは君だけじゃないかな。君の気持ちも僕はわかるよ。けど、彼はそれを望んでいるのかな？もう一度、会ってきたら？突然呼んでしまった僕のせいかもしれないけど、お別れ、できてないでしょ？」
『いえ、もう、決別はできています。』
「そっか。わかった。でも悪いけど、君には任務に行ってもらうよ。場所は"兵庫"だ。今度こそ、本当の任務さ。」
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作者名：杏 | 作成日時：2021年12月6日 13時
