34 ページ35
今日の夕食はお婆ちゃんの自慢の料理。
ほっかほかのジャガイモと、牛肉がたっぷり入って乳臭くなった肉じゃが。
人参を頬張ると口の中ですぐ崩れてしまうまでたーっぷり煮込んである。
ただ、みなと兄が７割食べてしまうのであまり量は期待しない方が良い。
≪ガラッ≫
お婆ちゃんがその音に反応しパッと顔を上げる。
私は椅子に座ったまま玄関まで首を伸ばすと、大柄な男の人が立っていた。
「来客……？」
「俺も客と間違われたらおしめーだなぁーっ」
「あああっ！ お爺ちゃんっ」
みなと兄は目を大きくさせて、もしゃもしゃと食べていたじゃがいもを緑茶で飲み下す。
お箸を止めて隣にどっこらしょと座ったお爺ちゃんを見たまま、不機嫌に目を細める。
「おっかえんなさい！ 今、晩御飯の支度するでさぁ」
立ち上がろうとするお婆ちゃんを右手で制し、「いいよ」と優しく断る。
「下で食べてきたから。そこの大日本定食でうどん食べたくなってよぉ。
それにほら、もう食べる物も残ってない。コイツが全部喰ったから」
「はぁ!?」
親指で示された先には、鬼の形相になったみなと兄。
酒瓶を片手に持って帰ってきたお爺ちゃんはいつにもまして横柄な物言いだ。
「てめぇ、今まで家族のことすっぽかして何処いやがった?!」
「そーんな説明は長ったらしいから早々に終わりにしてさ。
俺がわざわざここに来た理由を誰か聞いてくれ」
「ど、どうしたんです？ 急に帰ってきて……」
お婆ちゃんはオロオロするように尋ねると、「ガハハハハ」と豪快な笑い声が返ってきた。
私は緑茶だけでもと、食器棚からグラスを持って来てゆっくりと注いだ。
「実はみなとに言っておきたいことがあってよぉ」
「言っておきたいこと……？」
「ああ」と言って深く頷き、「実はみなとは家の子じゃない」「はっ!?」
みなと兄はキッパリと言われたその言葉に、素っ頓狂な声を出した。
お爺ちゃんは緑茶をぐびっと飲み干すと、立ち上がって背を向けた。
また玄関へ行こうとするのをお婆ちゃんは必死に止めていた。
「ま、待って！ あ……あ……」
「だから、俺やばーさんや六花とは全然血の繋がりがないんだよ！」
お爺ちゃんは大きなお腹を狸のようにポンポンと叩きながら行ってしまった――。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夏ミルク(プロフ) - 夏ミルクです。http://uranai.nosv.org/img/user/data/b/2/7/b2771ea544ee8ee95dc498968c3fc410.jpg←画像。みなとさんちょっと可愛くなりすぎましたかね？？あぁみなとさんかっこいいよぉ！って描いてたらこうなりました！ｗｗリクエストありがとうございました！ (2016年4月12日 19時) (
レス) id: cd92f3c289 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 詩桜さん» 返信遅れてすみません。読んでいただいてありがとうございます♪ 文についてもお話についても誉めていただいて感謝です。ありがとうございました(*^^*) (2016年2月15日 18時) (レス) id: 665ef5492b (このIDを非表示/違反報告)
詩桜 - 読ませていただきました！文才があってとてもうらやましい限りです(笑)イベントにも参加してくださって、ありがとうございました！！話にブレが無く、現実離れしているところも無くて、とても読みやすかったです！！これからもがんばってください！！応援してます！ (2016年2月15日 17時) (レス) id: d76ccfa709 (このIDを非表示/違反報告)
レイチェル・ハジェンズ(プロフ) - 夜鬼 神羅さん» 初めまして(o^O^o) 楽しんで読んでいただけて、レイチェルも嬉しいです！みなとと六花は善きヒロインと主人公だったのではないかと。お読みいただき、ありがとうございました♪ (2015年10月23日 21時) (レス) id: 6298628eb9 (このIDを非表示/違反報告)
夜鬼 神羅(プロフ) - キャラクターの個性がハッキリしていて、性格なども安定していたのでとても読みやすく、みなとと六花の心情もよく現れていて、とてもいい作品だと思います！読ませて下さって、ありがとうございました！！！楽しかったです！！ (2015年10月23日 18時) (レス) id: 8b627dd71d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：レイチェル・ハジェンズ | 作者ホームページ：https://twitter.com/seshiru777777
作成日時：2015年8月8日 21時
