夜明けの恋、そして君。【鬼滅の刃】〈完結〉 (ページ33)

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驚きで目を見開く義勇を見て、Aは静かに話し始めた

＿

Aは養父のもとに引き取られてからも、よく恩師鱗滝の元へ足を運んでいた。
その度に目にするのは、真剣に修行に励む二人の姿。

厳しい修行の中、見守る側から一歩引いていたが、その中で私の目に映るものは、いつも義勇と錆兎だった。

彼らと年が近く、無邪気なまでに努力を重ねる姿は、私にとって眩しくて、そして苦しかった。

『鱗滝さん、あの子達は？』

目を細めて二人を見つめる鱗滝さんに尋ねた。

「義勇と錆兎だ。」

その言葉に、Aは心の中で小さな胸の痛みを感じた。
身体が弱く、何もできない自分が、彼らにとってどう映るのかを考えると居場所がなくなってしまうような気がして。

義勇と錆兎が必死に修行する様子を見守りながら、私はひとり影のように彼らの背中を追っていた。

そんなある日、義勇と錆兎は姿を見せなくなった。
三日ほど経って、Aは彼らが最終選別に向かったのだと気づいた。
きっと彼らなら大丈夫だ。だってあんなにも強いのだから。

そう思っていた矢先だ。嫌な知らせを聞いたのは。

帰ってきたのは義勇だけだったと。
錆兎の死を、Aはすぐに察した。
しかし、そのことを鱗滝に尋ねることはできなかった。

それからの義勇は見ていられなかった。
口数が減り、表情が変わることもなくなった。

もう彼の笑顔は見られないのだろうかと思うと悔しくて泣いてしまった。鬼が憎いのに自分は何も出来ないちっぽけな人間だから。
でも私が泣く資格なんてない。遠くから彼を見つめながら、葛藤した

時は流れ、私は養父の家業の手伝いに忙しくなり、鱗滝さんの元を訪れる機会も減っていった。

時折交わされる手紙の中で、炭治郎くんの話を耳にすることはあっても、直接会うことはなかった。

そして先日、鬼が倒され、戦いが終わったことを知らせる鱗滝からの手紙が届いた。
それを受け取ったAは、胸の中で長い間押し込めていた感情が一気に溢れ出すのを感じた。
やっと、すべてが終わったのだという安堵とともに感謝の気持ちでいっぱいだった

Aにとっては、あまりにも長い時間が過ぎ去ったように感じられた。

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