夜明けの恋、そして君。【鬼滅の刃】〈完結〉 (ページ29)

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俺は一人縁側に座って二人に背を向けていた
二人が魚を焦がした俺を誂ったからだ
炭治郎は片手であんなに美味いものを作れるから
俺だって少しは上手くできると思ったのだが

予想外とでも言うような反応を見せる義勇に対して、二人は案の定だと口々に言う
義勇はこれに拗ねてしまったのだ

そんな二人は今、卓袱台に向かい合って茶を啜りながら話している

「そういえば、Aさん。さっき俺に君が炭治郎くんかって言ってましたけどあれって………」

『よく、鱗滝さんからお話聞いてて』

「鱗滝さんとお知り合いなんですか！？」

『そうなの。私が幼い頃、一人になっちゃってね。そんな私を鱗滝さんは拾ってくれて。』

「へえそうなんですね！でも俺たち会った事ありませんよね？」

『うん。私、普段の生活に支障はないけど人より身体が弱くて鬼殺隊入るには無理だったの。だから鱗滝さんは知り合いのところに私を預けてくれて。養父にも、鱗滝さんにも、本当の父のように大切に育ててもらった。』

「そうだっ…」

「そうなのか？」

炭治郎の言葉に被せるように義勇は言葉を放った

俺とはしなかった話を炭治郎にはこんなにも話している

「どうして俺には話さなかった」

『だって、聞かれなかったので…』

「聞いたら話したのか」

『うん』

　

義勇はまた悔しさに近い感情を抱き、捻っていた身体を縁側の方向に戻した

_

『じゃあ私行きますね。炭治郎くん、会えて良かったよ』

「はい！俺もです！お気をつけて」

Aを見送った後、炭治郎はくるりと振り返ってこう言った

「義勇さん。義勇さんはAさんとお付き合いされてるんですか？」

「？何を言っている。そんな間柄ではない」

「でも義勇さんはAさんのことが好きなんですよね？」

義勇は何を言っているのか分からない、とでも言うような表情をしている

「あれっ？違うんですか？義勇さんから嗅いだことのない匂いがしたのでてっきり………」

炭治郎に言われた言葉が頭の中で反芻していた

戸惑った。

　

こんなのは初めてだったから。

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