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夜風が靡く音と、乗せられた体温、こちらを見つめる視線。
私は、悠仁を庇護する言葉を聞き、肩の力が抜けていた。 しかし伏黒は、追い討ちをかけるように言い放つ。
「虎杖には、もう会えないと思ってください。 それが条件だ」
「な……にを」
「おやおや、僕がせっかくあれこれ頼もうと思ってたのに。 さて」
男が悠仁を抱えたまま私に近づく。 指を額に押し付け、気付かぬうちに、悠仁と同じく気絶させられることに驚愕した。
「……君、名前は？」
言われたことが理解出来ず、目の前の目隠し男を見つめる。 隣の伏黒は、信じられないものでも見ているかの様にこちらを振り返り、脂汗をかいている。
その声は、先程とは打って変わって真剣そのもので、私はこくんと喉を鳴らした。
「AAです」
「んじゃ！ Aも一緒に来てもらおうか」
「元よりそのつもりです」
「だめだ！」
被る言葉に、今度こそ伏黒に言っておかねばと、悠仁を抱えている男に断り、パーカーを悠仁に着用させる。
「伏黒さん、私は悠仁が無事でいればそれでいいんです。 もし、悠仁が独りで辛そうにしていたら……そうですね、映画をみながら、『ジョニーデップはやっぱりかっこいいね』『ディカプリオは流石王子様！』なんて言いながら、コーラとポテチをつまみ食いして、二人で笑って、泣いて……」
伏黒と男は、私の言葉に何か反応を示すわけでもなく、ただじっと聞き耳を立てている。
「『また明日も見よう』って言いながら、一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、朝を迎えて……大人になっても、仲良く映画を見るんだなって。 そう、思うんです」
(変わらない日常が、私は好きだった。 ゆっくりと流れていく時間が、私は幸せだった。 争いや、揉め事も、時にはあるけれど……それでも、――悠仁が笑っていると、暖かかった)
「だからもう、普通には戻れないと分かっていて、何もできないなんて、できません」
「君には、普通がどんなに尊いものか、普通じゃないことが、どんなに辛いことか、分かっているんだね？」
男は、現実を突き付ける事を躊躇しない。
「分かっているなんて、おこがましいです。 私はただ、――悠仁と一緒にいたいだけなんですから」
――頑張れ。
どこかで囁くような声が聞こえた。 その声は、最後に聞いた時よりも、ずっと……
「AAさん、ようこそ。――地獄の楽園へ」
恐ろしい言葉を消し飛ぶくらい、暖かい言葉だった
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クロワッサン(プロフ) - 猫助さん» たいっへん長らくお待たせいたしました(-_-;) コメントありがとうございます。 最新話更新いたしましたのでぐっすり眠れますね！！ (2021年4月28日 3時) (
レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
猫助(プロフ) - 先が気になって気になって、夜しか眠れません…作者様、続きを…続きを…！（密かに応援しています。更新、ゆっくりお待ちしています！） (2021年2月27日 8時) (レス) id: b4292b3d94 (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - 人形師さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 続きをお待ちいただいてありがたいです ^^) 嬉しいお言葉、ありがとうございます。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
クロワッサン(プロフ) - うたプリ大好き?さん» コメント遅ればせながらありがとうございます。 先を楽しみにして頂いて嬉しいです(*^^*) 作者かなりマイペースなもので…(^^; 気長にお待ちいただけると幸いです。 (2021年1月27日 15時) (レス) id: 9c7083b36c (このIDを非表示/違反報告)
人形師(プロフ) - 凄く面白いです！続きが気になります。応援してます！！ (2021年1月25日 4時) (レス) id: 0a38f0e1cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クロワッサン | 作成日時：2020年11月19日 21時
