プロローグ的なやつ ページ2
人は老い、そしていつしか命は散る。
その前の生き様で、後悔することないように生きよ。
とはよく言ったものだ。
お姉ちゃんは私と良守を妖から庇って、体に消えない傷を負った。
お父さんは妖と戦い、その末に亡くなった。
人は老いる前に儚くも命を散らすことがある。
これは、まだ幼いながらにして受け入れた、この世界の現実だ。
「お父さん!お父さん!目を開けてよぉ!!」
泣きじゃくる私に、そっと手を握って悲しみから耐えようとするお姉ちゃん。
守美子さんがお父さんを運んでくれなかったら、私たちは今もずっと、お父さんが亡くなったことを受け入れなかっただろうし、もしかしたら亡くなったとも知らず探し回ったかもしれない。
この時にお姉ちゃんも私も思った。
”人は簡単に傷ついてしまう。”と。
「お姉ちゃん!?お姉ちゃん!!お願い!目を開けて!!ひとりにしないで!!」
今度は私の目の前で、体に包帯をまきつけ倒れているお姉ちゃん。
この時に思った。
”人は簡単に死んでしまう。”と。
幼い私たちには、残酷すぎる話だが、これが現実だと受け入れるしかなかった。
お姉ちゃんが倒れた時に思った。
”もっと早く、お姉ちゃんに結界を張っておけばよかった。”
”もっと早く、妖を滅せば良かった。”
だからもう、後悔はしたくない。
誰も傷つけたくない。
だから――――…………。
”いつか”烏森の地を、私たちがいなくても安全で、”いつか”お姉ちゃんと良守達と幸せに暮らせる世にする。
だから私は、もっと詳しく、強くならなきゃいけない。
だから―――――…………。
「行ってきます。」
薄暗い雪村家の玄関に、そっと声が響いた。
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作者名:葉月 愛衣 | 作成日時:2020年12月14日 16時