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くるり、とAがターンをする度に裾がふわりと浮き上がり、まるで黒色のベタが優雅に泳いでいるかの様であった。
壁際やバルコニーなどからホールを眺めている生徒だけではなく、周囲で踊っている人達でさえ、クルーウェルとAに見惚れている。
色気を隠すことなく、寧ろダダ漏れの状態で踊っているものだから、顔を真っ赤にさせて目を逸らしている者までいる程だ。
｢あぁ……楽しいものだ……！｣
｢……それは重畳｣
激しい動きをしているわけではないのに、胸の内に潜んでいる情熱や激情が溢れ出してしまっている為、まるでタンゴを踊っているかのような雰囲気である。
曲がクライマックスに向かうにつれて、クルーウェルの笑みが深まっていくものの、その表情は少しだけ寂しそうだ。
面倒臭がりで目立つことが嫌いで、尚且つ他人からのスキンシップは受け入れるのに、自分からは触れてくれない彼女。
そんなAの手を取り、細い腰を抱き寄せ、教師と生徒という関係性を無しにして愛を囁くことが出来る。
｢このままずっと、踊り続けることが出来れば良いのにと思う俺を、お前は愚かだと思うのだろうな｣
｢現実的ではないと思いますが、貴方の考えを否定する気は微塵もありませんよ。……焼けた鉄ではなく、普通の靴を履かせてくれるのならば付き合いましょう｣
原作白雪姫をご存知だろうか。
王子様のキスによって白雪姫は目を覚ます、というのは改訂版の話であり、元々は棺が揺れた拍子に白雪姫は喉に詰まっていた林檎の欠片を吐き出し、息を吹き返すのだ。
その後、白雪姫と王子の結婚披露宴の席で、王妃は真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされ、死ぬまで踊らされたのである。
Aとしては、原作白雪姫の結末とダンスを掛け合わせた冗談のつもりであったのだが、どうやらクルーウェルは良い意味で言葉を捉えたようだ。
｢月光の降り注ぐ美しい夜、お前を迎えに行こう。……俺好みに染め上げてやる｣
耳元でそう囁かれたと思えば、仕組んだかのように丁度良いタイミングで一曲目が終了する。
それでも体を離してもらえずに、Aが不思議そうに首を傾げたところで、クルーウェルにぐっと強く腰を抱き寄せられた。
｢右耳だけでは寂しいだろう？｣
｢これは……｣
彼女が自分の左耳に触れてみれば、そこには華奢なデザインのイヤーカフがつけられていた。
ツァボライトの土星と、黒と白の雫が揺れる繊細なそれが輝いているのを見て、クルーウェルは満足げに口角を上げた。
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神桜佳音(プロフ) - ゆるりさん» わざわざありがとうございます！更新楽しみにお待ちしておりますね！ (2020年6月13日 12時) (
レス) id: 8032f2476b (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 咲桜さん» こちらこそ素敵なリクエストありがとうございました！ (2020年6月2日 22時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
咲桜(プロフ) - リクエスト書いていただきありがとうございました！和歌のチョイスも素敵でした！ (2020年6月2日 21時) (レス) id: cb464004df (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 神桜佳音さん» そっちもありましたね！ 何となく思い浮かんだ歌を書いてたので……くっ、そっちでもよかったのに……！！ 後で出させて頂きます！ (2020年6月1日 23時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - こんばんは！いつも楽しく読ませていただいております！最新の更新の話で百人一首が出ておりましたが、君がためで、監督生君は春のに続けたのでしょう？おしからざりし命さえもあったのでは…？と思ってコメントしてしまいました！更新応援しております！ (2020年6月1日 22時) (レス) id: 06bd6db604 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆるり | 作成日時：2020年5月18日 1時
