3 ページ30
やってしまった、Aの頭の中はこの言葉で埋め尽くされていた。
何が一緒に居て欲しいだ、何が寒くて痛いだ、そんな下らない身勝手な感情でリドルの行動を縛ってしまった己に対して、Aは途轍もない嫌悪感に苛まれていたのである。
これまで他人に甘えられなかった反動が出たのかもしれないが、だからといって彼に迷惑をかけるなど断じて許容出来なかったのだ。
｢すみません……世話を、かけました｣
｢ううん、良いんだよ。ボクはAの力になれて嬉しいんだ｣
｢お優しいことですねぇ。手間が掛かる面倒事を頼まれたといいますのに｣
｢キミは変なことを言うんだね。ボクがAに頼られて面倒だなんて思うわけないだろう？｣
リドルにとって、Aは命の恩人で唯一無二の友人で、全てを曝け出すことの出来る女性である。
リドルが積もりに積もった苛立ちや鬱憤、愚痴などの負の感情を言葉として吐き出した時も、Aは静かに話を聞くだけで賛同も否定もせずに解決策だけを口にするのだ。
怒りを共有して事を大きくし、騒ぐだけならば誰であろうと出来るが、相手に話させることで情報と感情を整理させられる人間などそういないだろう。
だけれども、リドルはAの不平不満や愚痴を聞いたことがなければ、頼られた記憶など僅かにしかなかったのだ。
自分だって頼られたい、甘えられたいし甘やかしたい、もっともっと傍に居たいと思っていた矢先のことだったのだから盛大に甘やかすに決まっている。
｢痛みはどうかな？｣
｢波は引きました。……きっと、急な環境変化によって何時もより痛みが酷かったのでしょうね。倒れなかっただけマシでしょう｣
｢今までは大丈夫だったのかい？｣
｢騙し騙しですかねぇ｣
｢そうか……なら、今度また、辛くなったらボクのところにおいで。ボクにまた、キミを甘やかさせておくれ｣
リドルはAの肩に顔をうずめながら、抱き締める腕に力を入れ、至極優しい声色でそう言葉を紡いだのであった。
＊
霞様リクエスト、リドル君に甘える話。
普段は甘える側のリドル君ですが、ずっと頼って欲しいと思っていた彼女から甘えてもらえて幸せ絶頂なんですよ。
月の障りが重たい彼女なんですが、元の世界では重役なのでぶっ倒れても休めなくて、顔面蒼白ながら徹夜で仕事を終わらせたという経験があります。
作者も重たい部類なので……自分の経験も思い出しつつ書きました。
ご満足頂けたら幸いです。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1885人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ツイステ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆるり(プロフ) - ゆゆ。さん» 黒執事好きですよ！！ ハムレットが出てくるんですか……！？ 漫画の購入が途中で止まっていまして……笑 近々揃えてちゃんと読んでみます！ でも！ 黒執事は凄く好きです！！！ (2020年8月20日 1時) (
レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ。(プロフ) - 凄く面白いです！(前の作品にコメごめんなさい…)ハムレットって黒執事にも出てきますよね…！もしかして作者様黒執事好きだったりしますか…？私的にはハムレット出てきて嬉しかったです（笑） (2020年8月19日 16時) (レス) id: ead64206de (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - マツリカさん» こちらこそリクエストありがとうございました！私もクルーウェル先生大好きなので書いていて楽しかったです！ (2020年5月22日 6時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
マツリカ(プロフ) - クルーウェル先生のお話ありがとうございました！！一生の宝物にしますうううつ！！！！ (2020年5月22日 6時) (レス) id: 88d493ffab (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - えむさん» こちらこそありがとうございました！ 勿論、リクエストは受け付けております〜！私でよければまたどうぞ！ (2020年5月21日 16時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆるり | 作成日時：2020年5月3日 19時
