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朝一からクルーウェルの手伝いをしていたAは、騒々しい足音を耳に捉えて僅かに顔を顰めた。
この世界に飛ばされてから一度たりとも、この様な足音が聞こえてきた時に平穏に過ごせた経験がないのだから。
「「「お願いします!!」」」
「……何が、ですかね」
そしてエーデュースとグリムが物凄い勢いで走り寄って来たと思えば、いきなり深々と頭を下げて大声で叫んだのであった。
大体内容は理解出来るものの、それが外れていて欲しいという思いが強過ぎてAは一歩後退る。
「オレ達と一緒に!」
「珊瑚の海に行って!」
「写真を盗るのを手伝って欲しいんだゾ!」
言うと思った。
Aが今までに見ない位に思いっきり顔を歪めたのを見て、エースは冷や汗を流しながら顔を逸らす。
リドルの時もレオナの時も巻き込まれ、渋々ながらに手を貸してくれたのだから今回も、と思うのも理解出来るのだ。
Aとしても手を貸すのは構わない為、顔を歪ませる程に嫌だと思う部分は別にある。
それは何も作戦も立てずに、行き当たりばったりで珊瑚の海に向かおうとしていることだった。
一時の感情に身を任せて行動し、三日間しかない時間を無駄にするのが嫌なのである。
「作戦は何も無し。いきなり珊瑚の海へと向かってアトランティカ記念博物館の写真を取れる程……アズールさんは簡単な殿方ではありませんよ」
「ウッ」
「それに博物館内の警備はどうなさるおつもりで。価値の高い品が展示されているというのに、警備員が居ないだなんて有り得ないでしょうに」
Aの口から紡がれる正論が三人の胸に突き刺さり、彼らはあまりの痛さに胸を押えてその場で項垂れた。
焦る気持ちは分かるが、流石に完全ノープランで特攻するのは無謀過ぎる。
Aの吐き出した溜息の重たさに、デュースは途轍もない申し訳なさを感じて身を縮こまらせた。
「あー……もう、分かりましたよ」
「!? 本当か!」
「珊瑚の海までお供しますよ。どうせ貴方達、私が頷くまで退く気がなかったでしょうに」
「「そんなことないって! ははっ……」」
三人の分かりやすい考えだなんて、Aにかかれば全てお見通しである。
目を逸らしながら空笑いをしている三人をジト目で見ていると、彼らの後ろからジャックとユウの二人がやって来た。
Aがきてくれることを聞いたジャックは耳をピンっと立て、尻尾をゆらゆらさせながら喜びを露わにしている。
「対価はジャックさんから頂きますね」
「何!?」
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ゆるり(プロフ) - ミニ林檎さん» お褒めの言葉、ありがとうございます!承りました。順番に書いていますので、少々お時間頂きますね。 (2020年4月23日 23時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
ミニ林檎 - 素敵な、ストーリーですね。リクエストしたいのですが閣僚の皆んなから追いかけられる話が見たいです。 (2020年4月23日 20時) (レス) id: a0bbb5bb79 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - **さん» こちらこそ、素敵なリクエストありがとうございました!楽しく書かせて頂きました〜! (2020年4月23日 13時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
**(プロフ) - ポムフィオーレのみなさんの美を追求する姿勢は夢主ちゃんにとっても居心地がいいものなのかなあと、ほっこりしました…!想像するだけで幸せになれる素敵なひとときをありがとうございました (2020年4月23日 11時) (レス) id: dd9fb51a76 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 月兎さん» わ〜!!そんなことを言って貰えて光栄です!リクエスト承りました。順番に書いていますので、少々お時間頂きますね。 (2020年4月23日 0時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆるり | 作成日時:2020年4月17日 0時