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顔のない怪物の右手にはランタン、左手には大きなツルハシ。
複数の足音が遠ざかっていくのを耳に捉え、Aは漸く好きなように行動が出来るようになった。
彼らは未だ未熟であろう、下手に魔法を使うことによって余計に怪物を煽る要因になるかもしれない。
それならば魔力を持たず、霊力も使えない彼女が己が身一つで時間を稼ぎ、彼らに作戦を考える時間を与えた方が確実だ。


「オオオオオオヲヲヲヲ!!!」


勢いよくツルハシが振り下ろされて、直撃した地面には大きな亀裂が入った。
今までも異形の者や、図体が三メートルを超える化け物を相手に戦い、勝利をもぎ取ったことを数知れず。
だが、今回の目的は勝利ではなく時間稼ぎ。
勝つ必要がないのならば、ただツルハシを避け、鉄パイプで殴打して後退させ、自分の身長が低く体が小さいことを活かせば良いだけである。

ガァンッ!!


「ン、ヌウオオオオッ!」

「ただのデカブツ……呆気なさそう、ですね」


Aの鉄パイプと、怪物のツルハシの柄がぶつかり合い、鉱山道内に鈍い音が響き渡った。



***



その頃一方、何とか逃げ果せた四人はユウを中心にして怪物を倒す作戦を立てていた。


「Aちゃんが時間を稼いでくれてる今しか時間がないんだよ!? それとも何! Aちゃんの期待裏切って、このまま逃げて退学になるの!?」

「それにアイツ……魔法使えないって言ってた。それにさ、Aは俺らが無理矢理連れてきたもんだし」

「分かってるよ! やるんだろ!」


作戦は決まった、一致団結もした。
だが、緊張と恐怖が押し寄せてきてしまい、ユウとグリムはかたかたと震えている。
ここで怯めば中で時間を稼いでいるAの努力は無駄になるし、危険を増やすだけとなるだろう。
意を決して、ユウは洞窟内に叫んだ。


「Aちゃーん! もう大丈夫! 戻ってきてー!!」

「やい、バケモノ! コ、コココッチなんだゾ!」


すると、洞窟内からとん、とん、という軽い着地音と、ずんずんと重たい足音が聞こえてくる。


「それで、作戦は」

「Aちゃん……! よかった! あっ、と、取り敢えずなるだけバケモノを洞窟から引き離そう!」

「了解致しました」


近くに潜んでいるエースとデュースも、彼女が傷一つなく出てきたことに安堵して息を吐き出した。
しかし、次にAが発した言葉と、とった行動に驚愕する。


「……取り敢えず、怒らせますか」


そして彼女は怪物の顔面部分を鉄パイプで思い切り殴り捨てた。

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にゃーちゃん - とても面白いです!これからも頑張ってください! (2021年5月16日 20時) (レス) id: 6c3b400c86 (このIDを非表示/違反報告)
しおあめ。(プロフ) - 突然のコメント失礼します。フロイドが主人公につけたあだ名の"クリオネ"は、すでにオルトを指すものとして使用されていたと思います。 (2021年4月5日 13時) (レス) id: e70718cc0c (このIDを非表示/違反報告)
はまぐり - はぁーー好みです!面白いです!! (2020年5月30日 16時) (レス) id: fe50b1b3b6 (このIDを非表示/違反報告)
蝶妃 - 夢主ちゃんとキャラの絡みが見ていて面白いです!マレウス様やリリア様ともっと絡んで欲しいですね。これからも頑張ってください!! (2020年4月8日 7時) (レス) id: 1fa4972d94 (このIDを非表示/違反報告)
リリア - 初めまして、読んでいて楽しい作品ですね、主人公のキャラも結構好きです。勿論ゆるりさんのペースで更新頑張ってください (2020年4月7日 22時) (レス) id: 008426968d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆるり | 作成日時:2020年4月2日 1時

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