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一体どうしたのだろうか、とAは首を傾げたが、オクタヴィネルの三人は威嚇の理由が分かっているらしい。
一気に不機嫌さを醸し出し始めた三人に対し、全く怯えることなく睨み返す稚魚二人の間に挟まれる格好となってしまった。
理由が分からない分、どちらの味方をすることも出来なければ、どちらかを宥めることすら出来ないのだから困りものである。
「オレ、おねーちゃんと一緒にいる! お前らとはやー!」
「僕もおねえさんが良い!」
「ア"ァ? こいつ何言ってんの?」
「おやおや、昔の僕は物分りが悪いんですねぇ。早くAから離れろと言っているのが分かりませんか?」
そっくりな顔が四つ揃い、鱓の本能を剥き出しにして威嚇し合っている原因の一端が己であると理解した彼女は、ほんの僅かな音すら立てずにアズールの横へと移動した。
アズールは目線だけできちんと説明しろ、と言われた気分になり、喧嘩している四人を呆れ果てた瞳で見遣りながら口を開く。
「フロイドがつまらないから、と言って態と実験手順を変えたんです。ペアを組んでいたジェイドも巻き込まれた結果、二人の分身ができてしまったようで……そのことについてVIPルームで話し合いをしていたんですが、少し目を離した隙に逃げ出したんですよ」
「大方そうだろうとは思っておりました。それで、何故彼らは一触即発な雰囲気になっておられるのでしょう」
「フロイドとジェイドの感情を中途半端に引き継いでいる稚魚が、本能で貴女を見付けて、懐いたのが気に入らないんでしょうね」
「……私、彼らの分身をどうこうしようとは考えておりませんが」
「違いますよ! 分身が取られると思ったのではなく、Aを取られるのが嫌なだけです……ま、それは僕もですけれど」
はぁ、と溜息の様な返事が零れる。
大人げなくぎゃあぎゃあと自分の稚魚と言い合っている様子は中々に愉快であるし、見ている分には困らないのだが、何時こちらへと飛び火してくるか分からないというのは実に厄介だ。
魔法の飛び交う乱闘騒ぎが始まる前にどうにかしようと考えて、Aは幼いフロイドとジェイドを抱き上げた。
「は!?」
「おやおや……A、どういうつもりですか?」
「どうもこうもありませんよ。今此処で暴れられるのは困ります。一度頭を冷やしなさいな……オクタヴィネルに向かいますよ」
双子を抱っこしたまま、アズールの横に並んで歩き始めたAのことを、二人はむすりと頬を膨らませながら追いかけた。
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太宰、乱歩などの頭脳派推し - いろんな世界に行ってるみたいなので、其処で知ったボカロなどを歌ってみてほしいです!歌ってみた的な。 (2022年3月14日 3時) (レス) @page20 id: 6e38a4139d (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - 舞夜桜さん» リクエストですね、大丈夫ですよ! 喜んで承ります〜! 少しお時間いただきますね。 (2020年7月27日 21時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
舞夜桜 - モブ男が夢主を襲う「身体中を触ったり、叩いたりする」 それを目撃したキャラが激おこする。 とか書けますでしょうか? 無理でしたら大丈夫です! (2020年7月27日 20時) (レス) id: 7970974f99 (このIDを非表示/違反報告)
ゆるり(プロフ) - ミミズクさん» ありがとうございます〜!! 無理してませんよ! 楽しくやってますから! これからも頑張りますね! (2020年7月17日 9時) (レス) id: 6a421b584d (このIDを非表示/違反報告)
ミミズク - いつ見ても最高です!更新無理せず頑張ってください!!! (2020年7月16日 23時) (レス) id: e138928b3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆるり | 作成日時:2020年7月4日 16時