聞こえますか、この声が。 (ページ38)

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ep.38 ページ38

末澤side

「おい、大晴。ドアの方見すぎやろ。集中せえ。」

「ええっ！？？！？そ、そんな事ないでしょ、もう誠也君こそ、俺の顔見すぎやーん。きゃっ。」

「いや、きゃっ。やないわ笑」

毎週金曜日。恒例の、俺の義足の調整。

普段なら、アホみたいに真剣な眼差しで、俺の義足と向き合ってる大晴が、今日は少しおかしい。

「ちょっと、ジョギングしてきます。」って、5分ほど前に部屋を出てった晶哉。

晶哉が出てったドアをチラチラと見続ける大晴の表情には、焦りとか、心配とかそんな感情が滲み出てるようで。

なんかあったな。っていうのだけはわかる。

「誠也くん。」

「んー？」

「もし、もしもの話ですけどね。.........やっぱ、なんでもないです。」

「はー？？」

思わず、頭をしばきたくなる衝動に駆られてたけど、それができなかったのは

いつも、ムカつくくらい笑顔の大晴が、泣きそうやったから。

「晶哉と喧嘩でもしたんか」

晶哉の名前を出すと、さらに下がった眉毛は、素直でわかりやすい大晴の感情を簡単に写して

「話くらいなら、いつでも聞いたるよ。」

たまには、最年長らしい事をしてやりたい、なんてな。

「時々ね、晶哉の事がわからなくなるんです」

「大晴...？おい！」

ぽろっと呟いた大晴の眼から

零れ落ちた一筋の涙は、

俺を焦せらせるには十分で。

大晴は、半ば呆然としてはらはらと涙を流すばかりで

頭の片隅に、あの日魘されていた晶哉の苦しそうな表情が消え隠れして

何が起きてるんか、想像はつかんくても

良くない想像は止まらなかった