聞こえますか、この声が。 (ページ36)

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ep.36 ページ36

長尾side

「みっちー、あんま元気ないよな。」

唐突に恭平くんの口から出てきた言葉に正直驚く

「そうかな？いつもと変わらんく見えるけど。」

「あんま、寝れてないみたいやねん。ほら、俺同室やからさ。」

恭平くんの目線の先には、教会の庭で、ちびっ子達とサッカーをして遊ぶみっちーの姿があった。

小さい子達も、みっちーも笑顔で楽しそう。

「計画、だいぶ進んでるんやろうな。」

大吾くんや、丈くん。スラム街の面々を中心に建てられてる計画の詳細は、あんまり僕らには知らされてないけど。

纏めて、話すって言ってた大吾くんをもちろん俺らも信用してる訳で。

「俺さ、爺ちゃんを政府の奴らに殺されてんねん。」

「そっか。」

「おん。だからさ、ようやく復讐できる。一人じゃ何もできんかったけど。ここにおる仲間がいたら。きっと。」

みっちーも、誰かに復讐したいんかな。

みっちーが、自分の下の名前を嫌うのは、お母さんにそう呼ばれていたからだというのは、だいぶ前に本人から聞いた。

恭平くんは、お爺ちゃんの復讐で

みっちーも、きっと同じくらいの強い気持ちで

じゃあ、自分は？

空を初めて見たのは、脱獄したあの夜だった。

物心ついた時から、記憶にあるのは収容所の白い天井で。

もちろん、親の顔なんか知らん。

恭平くんのいう通り、これだけの仲間がいたら、きっと政府の奴らに一泡吹かせる事が出来る。

でも、自分はほんまに、それで幸せになれるんかな。

もしかして、俺からっぽなんかな。

そんな、不安がグルグルと頭をよぎる

「けんとー？」

頭を上げたら、隣にいたはずの恭平くんはいつのまにかいなくなっていて。

代わりに、大橋くんが優しい笑顔で立っていた。