聞こえますか、この声が。 (ページ19)

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ep.19 ページ19

末澤side

焦るば焦るほど、脚は前に進んでくれんくて

いや、そりゃ右足は義足なんやから、全力疾走なんかするもんやないけど

とにかく今は

早く

早く

あいつのとこに

右足が気持ちについていかない

鉄の塊やし、重いし、痛いし

「っ！！」

小さな段差に躓いて、体ごと道に叩きつけられる

こんな、小さな段差さえも、今の俺には障害で

自分が情けなくて、苦しくて

泣きそうになる

どうしたらええねん。

2年前、起きたら仲間が２人死んでて

自分の右足は無くなってた

壊れたように俺に謝り続ける丈に、お前のせいやないって言うので精一杯で

だから、結局丈も失ってしまった

和也は、たまに街に戻ってきてくれて、外のこと、政府の奴らのこと、丈の事。

教えてくれたけど。

それでも。

最後に見たあいつの顔がボロボロの泣き顔なんて、俺は絶対に

「っハァ！丈！！」

スラム街の端

ひっそりと建つ教会に飛び込む

「末澤、子供達寝てるんやから、静かに。」

「っ！！大地！丈は！？」

もう、走られへん。

右足の義足との接地部分が焼けるように痛い

ずるっと座り込むと、大地の大きな手が背中にそっと回された。

「.....もう、大丈夫。」

回された手が震えてるのが伝わってきて

ああ、そうやった。

久しぶりなのは俺だけやないよな。

大地に肩を貸してもらって、立ち上がる

ガラス越しに見えたのは、酸素マスクの下で顔を歪めて寝てる丈。

その傍らには、和也が寝息を立てていて

和也の背中に掛かってるブランケットはきっと古謝が掛けたやつ。

「明日には目も覚めると思うで。」

「他の奴らは？」

「２階に空いてるベッドがあったから、そこで。和也だけはどうしても側を離れんくて。」

「そっか。」

「こんな日、もう来おへんと思ってた。」

ポツリと呟いた大地の手をギュッと握る

その手が俺の手を握り返す事はないけど。

でも、大地は昔みたいに笑ってくれた