小南桐絵という少女 ページ6
"キリエちゃん"はむすっと頬を膨らませ、ソファにどっかり座っている。その横で、Aは慣れたようにお茶とお菓子の準備を始めている。迅は向かいのソファに座りながら、ただこの状況に困惑していた。
迅と同じくらいの年の女の子がいるとは聞いたが、この子だろうか。クセが強いとAに言わしめるその少女は、なるほど確かにクセが強い。というか気が強そうで、さっきから迅を忌々し気に睨んでいる。
「……あたしに黙って出て行ったかと思えば、ヘンなヤツ拾ってくるなんて」
「桐絵ちゃんは紅茶何がいい？ アップル？」
「レモンにして！ それでね、ほんとのレモンも浮かべるわ！」
「はーい」
小南がぶつぶつ文句を言っているが、Aはそれを聞き流して話の方向性を変える。うきうきしながら「今日はチーズタルトの気分！」と足を揺らす小南に、Aはまた慣れたように「今日はマドレーヌだけど、嫌？」と訊く。小南はもちろん「嫌なわけないわ！ けど、明日はチーズタルトを買ってきてね」と上機嫌に答えた。
「悠一君は紅茶飲める？」
「あ、はい」
「ちょっと、こんなやつにお茶なんて出さなくてもいいわよ」
「レモンティーでいいかな」
「はい」
「ちょっとAさん〜〜！」
じたばたする小南の頭をふわりと撫で、「レモンを切ってくるから仲良くしてるんだよ」と言い残してAは行ってしまった。小南のみならず、迅まで戸惑う。気まずすぎる！
Aがキッチンに消えると、その後ろ姿を見送っていた小南がぐるりと振り向いた。そして腕を組み、迅をにらみつけ、高圧的に口を開く。
「アンタ、誰だか知らないけど、ここはお遊びで入るようなところじゃないわ。はっきり言って邪魔よ。お茶を飲んだらさっさと出て行きなさいよね」
迅ははあ、と気の抜けた返事をした。年下の、迅よりも小柄な彼女がふんぞり返っても、多少のイラつきはあれど特に何も思わない。というか迅には圧倒的に情報が足りていなかった。ここが何をする施設なのか、Aと小南のつながりは何なのか、小南の言う「遊びで入るところじゃない」とはどういう意味か、迅はどれもわかっていなかった。
迅の気の抜けた返事に小南は「フンっ」と鼻を鳴らすと、ソファにお上品に座り直した。言葉はきついし生意気だが、一つ一つの所作を見ると育ちのよさが伝わってくる。それだけに、迅は小南がこんなところで何をしているのか不思議でならない。
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 213人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ワールドトリガー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
