大人の事情 ページ28
ベランダにてタバコを一本、取り出して火をつける。胸いっぱいに毒の煙を吸いこむと、頭がクリアになっていく気がした。
そろそろニコチン中毒になってきたかな、と危機感を覚えつつも「いる？」と隣の彼女に差し出すが、彼女は仏頂面で「いらない」と突っ撥ねた。
「いい加減にしないと死ぬぞ」
「そんなすぐには死なないって。でもそうだね、肝に銘じておくよ」
言いつつ、二本目を取り出して指に挟んでおく。短くなってきた一本目を捨てて二本目に移ると、カティはジト目でわたしを見やった。
カティはいいやつだ。不愛想で仲良くなるまでに時間はかかるが、仲良くなれば可愛さがわかる。典型的な"身内に甘い"タイプで、本国にいる弟さんをそれはそれは大切に想っているのだ。いわゆるツンデレってやつ。
それにカティは強いのだ。たった一人で近界から
「……あいつも、連れてくるのか。ユウイチ」
「ああ、きっとそうだろうね、あの子は強いから。わたしはもう勝てないな」
「Aは戦い方が特殊だろ。あいつが強いという判断材料にはならないさ」
「でも強いでしょ？」
「……まあね」
カティは苦々しく頷いた。それはたぶん、悠一君が強いのが悔しいとかそう言う次元じゃなくて、ただ単純に悠一君みたいな子どもが強くならなければいけなかった現状を憂いているだけだ。周りはよくわたしのことを子ども好きと称するけれど、カティも大概だ。
ちなみにカティは桐絵ちゃんが強いとも認めている。悠一君が桐絵ちゃんと同じ土俵に立っていることを嬉しく思いながらも、カティと同じことを憂いた。
「……戦争かぁ」
それは大して珍しいものでもない。この国だって数十年前まではそれに熱を上げていたし、今も世界のどこかには戦争に勤しんでいるところもあるだろう。それを近界ではわりかし頻繁に起こっていると、それだけの話だ。
カティは神妙な顔つきで押し黙った。戦争とはそんなに珍しいものじゃない。けれど、やはり気持ちの良いものでもなければ、それを肯定していいわけでもないのである。
それをわかっていてもそうせざるを得ない状況に在る隣の友人らを、同盟を結んでいる相手でもある彼らを、わたしたちが助けようと考えるのも当然の話で。それを決定した城戸さんに、わたしも大賛成だ。
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ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
