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身動きをするたびにふわりと鼻を掠める苦い香りに、迅はすっかり慣れきってしまっていた。
Aは車内でも煙草を吸う人間のようで、彼女の愛車の中はいつでも煙草の匂いがする。もっとも、Aは大量に摂取するほどニコチン中毒者ではないようで、迅がふと車の煙草の匂いが薄くなってきたなと思うと、翌日には匂いが濃くなっていたりする。毎日のようにAの車に乗っている迅は、その周期をなんとなくではあるが把握している。
小南も迅も、Aの乗るソウルレッドのアクセラがお気に入りであった。
「一時四十分。今から買って帰れば早すぎるくらいだねー」
「どうする？ 早く帰って模擬戦でもするかい」
「……いいや、ちょっとだけ遊んで帰ろう。たまにはいいでしょ、Aさん」
「もちろん構わないよ。さーて、どこに行くかな」
Aはアクセルを踏み、休憩に立ち寄っていたコンビニエンスストアから道路に出た。しばらく車を走らせて信号で一度停まると、Aは迅に「何がしたい？」と訊く。
迅は考え込んだ。今は一時四十分で、本部には三時くらいには戻りたい。目的の洋菓子屋から本部までは三十分強かかり、多めに見積もっても遊べる時間は四十分ほどである。その短い時間で何ができるのか？
一方Aは気楽なもので、暢気に「悠一君と遊ぶのは初めてだねえ」と笑っている。迅は考えるのを一旦やめ、Aに尋ねた。
「小南とはよく遊ぶの？」
「よくってほどでもないけど、たまに連れ出してはいるよ。あの子習い事で忙しいし」
Aの言う通り、小南は迅とは違って忙しい。良いところのお嬢様なのではないかと迅は疑っていたのだが、あながち間違いでもないらしく。それなりに裕福な家に産まれた小南はいくつも習い事を掛け持ちしている。
それだけにボーダーに顔を出す日も少なく、数日に一度、それも数時間程度だ。それであれだけ強いのだから全く末恐ろしい。
ちなみに、Aも多忙の身である。平日の午前は大学、午後はバイト。迅が本部に遊びに来る夕方はボーダーとして活動し、迅を家に送り届けてから夜は深夜帯のバイトに入っていて、家に帰る時間はだいぶ遅い。たまに、深夜帯バイトのあともボーダー本部に寄って活動することもあると言うので、睡眠時間はいかばかりか。
そんな中でも休日は迅や小南に時間やお金を割いているのだ。迅はそれをわかっているので、Aを好き勝手振り回している小南を許せないのだった。
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ノア(プロフ) - Noahさん» あいしてます (2021年9月21日 17時) (
レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
ノア(プロフ) - 金の帳さん» ありがとうございます。迅さんカッコいいですよね！ 続編もよろしくお願いします。 (2021年9月21日 17時) (レス) id: dd57ce1718 (このIDを非表示/違反報告)
Noah(プロフ) - すきです (2021年3月20日 2時) (レス) id: 3eb26abe40 (このIDを非表示/違反報告)
金の帳 - めっちゃおもしろいです！迅さんはやっぱりかっこいいですね！更新楽しみにしてます！ (2021年2月8日 23時) (レス) id: 1e8abd378d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ノア | 作成日時：2021年2月7日 10時
