(305)触れてはいけない、もうひとつの理由(キオク) ページ27
……確かに自分は、眠ったはずだ。
だったら、今見ているこれは……なんだかわからない。
けど、割合で言えば近くの広場でサッカーをしているのが多かった。
そんな光景を遠くから木に凭れて木陰から眺めている。
『ねぇ、なにしてるの?』
短い赤毛の少年が、しゃがんで顔を覗き込んでいる。
聖羅「なんもしてねーけど」
『じゃあ、一緒にサッカーやろう?楽しーよ!』
……サッカー。
その言葉に、あたしは無性に腹が立った。
兄があたしに教えたことであり、何より自分が絶対嫌いな存在だからだ。
聖羅「チッ……やらねーよ、話しかけんなうぜぇ」
『……っ』
少年は傷付いたのか、笑顔だったその表情は泣くのを堪えるようなものに変わる。
『っ、……うぅ……っ』
あーあ……。
ガキは単純だから、ちょっとやそっとのことですぐ反応を示す。
ま、このガキが泣こうが喚こうが、あたしには関係ない。
それはそれで後々面倒な気もするが、人間は第一印象というものが悪ければ悪いほど遠ざかってくれるし、その方がラクだ。
聖羅「…………」
……コイツ、けっこう強情だな。
じっと、堪えるだけ堪えてムダな時間ばかりが過ぎる。
『おれ、は……。っ、きみと、なかよくなり、たい……』
小さく深呼吸して、しゃくり上がる声を落ち着けながらあたしにそう言った。
仲良く?あたしと?
冗談じゃない。
聖羅「あたし、人間と慣れ合うつもりなんてねーから。アンタがなに考えてんのか知らねーけど、あたしは相手のこと考えず気安く話しかける人間は嫌いだから」
『そんなこといわないで……。っ、いたっ?!』
指先が聖羅の頬をかすめた途端、少年は顔をしかめた。
指には深い切り傷ができて、一筋の血液が垂れ流しになる。
何が起こったのかわからなくてぽかんとしてた少年の表情もつかの間、せっかく我慢していた涙が、大粒になってぼろぼろと落ちていった。
『い……、痛いよぉお〜!』
痛みで盛大に泣き噦るガキに、耳を塞ぐ。
なんだなんだ、とこっちによるチビどもが、少年を慰め始める。
『どうしたの、ヒロト?!』
1番に声をかける青髪の少女が、ヒロトと呼ばれた少年の顔を覗き込む。
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雷雨(プロフ) - マミーさん» おはようございます〜。良いですよー (2021年1月23日 7時) (レス) id: b56424d09c (このIDを非表示/違反報告)
マミー(プロフ) - 雷雨さん» 名前変わりました・・・ボートに書いて大丈夫ですか?? (2021年1月23日 7時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 雷雨さん» ありがとうございます……… (2021年1月8日 16時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
雷雨(プロフ) - ハナさん» あ、どうぞどうぞ (2021年1月8日 16時) (レス) id: b56424d09c (このIDを非表示/違反報告)
ハナ(プロフ) - 雷雨さん» ここではなんですので、ボードに書いていいですか……? (2021年1月8日 15時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
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