第40話 ページ42
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「素晴らしい能力だね、A君」
「はぁっ……はぁっ…其れはどうも」
首を曲げると、胡散臭い笑みを張り付けた森さんがいた。
目的地の首領室で今、中也に押さえつけられている。
「およそ二十時間振りかな。またこうして会えるとは」
「外泊届けを出し忘れていましたので」
「そう云えば、書類を渡し忘れていたね。はい、此れが外泊届け…っと、中原君、君も座り給え」
「ですが」
「座り給え」
「…はい」
何事もなかったかのように話す私たちを、困惑した様子で見守っていた中也は漸く手を離す。
下手に刺激しないように、ゆらゆらと伸びをして勝手に座った。
「其れで、
「……は?」
隣で中也が呆けたように口を開けている。
信じられないものでも見るかのように、私を凝視している。
「其れは有給休暇でしたっけ? 私、今は無所属なんですが」
其の扱いになったか、と事態を咀嚼し飲み込む。
休暇中の人間を捜索させておいてよく言う。
「無所属が真夜中にマフィアへ殴り込みかね」
「止められ、いえ、いきなり殴りかかってくるから逃げてきたんですよ」
「最短経路を通って侵入して来たね」
「三回も通わせて覚えさせましたよね」
書類を渡し、会議へ参加し、制圧へ向かい、呼び出しを受けてビルのなかを移動した。
外部から侵入する経路を、仕込まれた。
「手前…覚えたのか」
「もう忘れましたよ」
酷く集中しなければいけないのだ。
此の目の前で笑みの仮面を被る"天才"と違って、私の頭は賢くない。
カチ、と短針が時を刻む音がした。
「中原さん、あと数時間です」
「…夜明けか?」
「私が貴方方に
仮面の笑みが濃くなった。
初めて会った時から、恐らく此の人は嘘を見破るだけの異能力ではないと勘付いていたのだ。
隠すより話した方が良いと、探し物についても言ってあった。
探し物が帰る手段ではないと、暴力や脅しでは私の力が発揮できないと、何処で気付いたのだろうか。
二回目に訪れたとき、休暇の申請書類を机上に並べたボスは言った。
一月を期限としよう
先ずは君のやり方で探すと良い
其れ以降は、我々の好きなようにやる
私の異能力は信頼関係が必要になる。
無理強いするよりも自発的に協力した方が良い。
其の為の猶予期間。
「太宰さんのお陰でギリギリになりましたね」
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時