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第29話 太宰side ページ30





「はぁ……一人で来たわけ?」

夕焼けが伸びる裏路地。

見たくもない顔を見るために、溜め息を吐いてから視線を上げた。

闇から溶け出てくる小さな影が人の形を取る。

「俺一人で十分だ」

睨み付けてくる中也に笑みを向ける。

「居場所も分からないのに?」

「手前が匿ってンだろ」

「そうだよ」

あっさりと首肯して見せる。

嗚呼、そんなに忌々しそうに歪むのはいつ振りかな。

彼女はどれほど君を好いてくれた?

彼女は君にどんな《嘘》を吐いた?

Aは、どこまで君を信じた?

中也はノせられやすいんだから、手っ取り早く殴りに来たら良いんだよ。

予想よりも冷静らしく腕を組んだまま動かない。

「首領の命令だ。手前を殺してでも彼奴を見つけ出す」

「私には関係無い」

「どうだかな」

「何?」

懐から取り出したのは拳銃、ではなくて小型の機械。

「彼奴の身体には梶井特製の爆弾が仕込んである」

「……」

「探偵社のビルぐらいなら軽く吹っ飛ばせるらしいぜ」

人体で爆発したらどうなるかなんて、考える必要もない。

「成る程」

静かにそう呟いて目を閉じる。

中也は私を警戒しているのか距離を保ったまま。

「彼奴の居場所を吐けば、手前は一先ず見逃してやる」

「…其れは私に何の得があるんだい?」

「彼奴の命は保証される」

「マフィアが命を約束するとは。森さんは大層気に入ったようだね」

全く、余計なことを。

「『殺せ』ではなく、『連れ戻せ』でもなく」

中也は直ぐに表情(かお)に出る。

「『見つけ出せ』と言ったんだろう」

彼女が何も考えずに、ただ暴力を理由に逃げ出したりしない。

「見つけ出して、今後どうするかは彼女に委ねる。其の爆弾も只の脅しだ」

森さんは組織の利益を一番に考える。

彼女の使い方も、既に検討がついているんだろう。

「確かに梶井の爆弾の威力は凄まじい。開発の途中で欠陥品が出来るのも日常の事だ」

「昨日の今日で随分調べたな」

「鎌掛けだよ。君は簡単に引っ掛かるね」

「手前__っ!」

「彼女が爆弾(くびわ)に気付かない訳がない」

何故、廃工場であんなに派手な爆発が起きたのか。

逃亡の合図ならば、被害の拡大は逃げられない可能性を生む。

「そして彼女の思惑通りに君は此処にいる」

書き置きでも残してあったんだろう。

其の気にさせるような何でもない《嘘》が。

「森さんに手放したくないと言わしめる逸材だよ? 君一人で十分だと?」

笑わせるね。

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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時

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