第18話 ページ19
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身支度を整えて部屋を出ると、既に中也が待っていた。
「お待たせしました」
「俺も今来たところだ」
どうしてそういう台詞がさらりと吐けるのか。
行くぞ、と歩き出した背中を追う。
当たり前だが、ボスの場所へは容易には辿り着けない。
はなから道を覚える気のない私は軽い足取りで付いていく。
おや、この前はこの壺を右に曲がったような?
まぁいいか。
ぐるぐる、ぐるぐると中也と黙って歩く。
ボスに会うのは三回目だ。
二回目は中也を通じて呼び出しを食らった。
時間があるときにというアバウトな呼び出しだったため、どうしたものかと悩んだものだ。
結局、内容はエリス嬢の遊び相手だった。
人形のような愛くるしさで、それはもう可愛かった。
ボスが溺愛するのも納得できる。
朝早いからまだ寝てるかな、なんて考えながら歩いていると隣からの視線に気づいた。
「…どうかされましたか」
「思い出し笑いか? …ニヤけてるぞ」
そのひきつった口許は引いているからですか。
余程、気色が悪かったらしい。
「気を付けます」
「あぁ…」
微妙な空気になったところで着いてしまった。
ここでスッと切り替えられるのが大人だ。
真剣な表情を作った中也の、一歩後ろに控える。
「首領、中原です」
「……」
「……」
「……」
「…首領」
ガチャ、
「エリスちゃーんっ!」
「嫌ッ! リンタロウ来ないでッ!」
ガチャン。
「……」
「……」
「中原さん、朝食の紅茶にファーストフラッシュのフラワリー・オレンジペコを用意しています」
「待て、おい止まれ」
回れ右をした肩を掴まれ、またくるりと反転させられる。
「何も見ていない、良いな」
「何のお話でしょうか」
「なら良い」
真剣な表情を作った中也の、一歩後ろに控える。
「首領、中原です」
「入り給え」
扉の向こうは広い執務室だった。
肘をついて手を組むボスの座っている椅子に引っ掛かる、フリルのドレスがなければ威厳もあるだろう。
「さて、昨晩の報告を先ずは聞こう」
「はい」
何の情報が盗まれたかは知らない。
私は仕事をしただけだが、中也にとっては直轄でなかったと云え部下の裏切り。
元気がないし、あまり眠れなかったのだろうか。
「大活躍じゃないかA君」
「中原さんの戦闘能力あってこその作戦でした」
「うんうん。では本題に入ろうか」
声音はにこやかに、表情は笑みの仮面が張り付いたまま。
「A君、正式に組織に所属し給え」
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時