第17話 ページ18
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「Aや、無事だったかえ」
帰るなり出迎えてくれた紅葉さんに抱擁される。
「紅葉さん、夜分に申し訳ありません」
「何を言う。此れが
「はい、ありがとうございます」
「其れで佳い」
既に就寝していただろうに、髪も化粧も整えて出てきている美女には尊敬しかない。
ただいつもよりシンプルな和装は紅葉さんの温もりがよく伝わってきて、香る匂いにもクラクラしてしまいそうだ。
「Aに話がある。姐さん、後は頼みます」
「心得た。余り長くするでないぞ」
ぺりっと後ろから引き剥がされた。
邪な思いが中也の方に伝わってしまったのか、酷く不機嫌にみえる。
別れた後、私は廃工場に逃げ込んだとされていた異能力者を追って街に駆け出した。
1つ目の違和感は中也と部下の会話。
いつもの違和感が何処に働いたか確信が持てずに黙っていた。
2つ目は門扉が吹き飛んだときの音。
音が逃げたような不思議な響き方をしていた。
3つ目は厄介な異能力。
動物の姿に変身出来るという。
廃工場は寂れていて人の出入りした形跡はなく、居たのは数匹の猫のみ。
似たような経験があったことが、幸いにも勘を的中させた。
「つまり、地下通路を音が伝って反響したことを、門を吹き飛ばした轟音と地面の揺れ方から気づいたと」
「その通路も、人が通れる大きさではありませんでした」
例えば、鼠のような。
「人間の出入り口は封鎖した、と考えると辻褄が合います」
些か早計で荒唐無稽である。
だから相手が動くまで待つしかなかった。
「その異能力は変身した動物と知能が同等になり、その知能が高いほど時間が短い」
優秀なポート・マフィアは幾つかの例をしっかりと記録していた。
「仮に鼠で一方通行の道を走ることだけ考えれば」
「遠くまで逃げられる、か」
「鼠も賢いので、他の動物だったかも知れませんが」
そこは紅葉さん率いる拷問専門の班が明らかにしてくれるだろう。
「逃げ切った先で爆弾の遠隔起動ができれば、あれだけ分かりやすくて派手な合図はないでしょう」
現場の混乱に乗じてバラバラに逃げる。
情報持ちとは真逆の方向へ。
「走った先で一般人の
襲い掛かり昏倒させ、連絡をいれて迎えを待った。
中也は静かに目を閉じる。
「朝一で首領に報告だ。もう寝ろ」
「はい、お疲れ様でした」
無言の中也に頭を下げて辞した。
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梦夜深伽(プロフ) - 加奈さん» 中也の出番はこれから増やします!! (2020年6月6日 19時) (レス) id: 885dd45dfc (このIDを非表示/違反報告)
加奈 - 中也。 (2020年6月3日 15時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
梦夜深伽(プロフ) - るるさん» ありがとうございます! (2020年6月3日 1時) (レス) id: fef69d0af7 (このIDを非表示/違反報告)
るる(プロフ) - 文章が丁寧で物騒でめちゃくちゃ面白いです...!!更新楽しみにしてます..!!!! (2020年6月1日 15時) (レス) id: 30c2a422ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2020年5月24日 23時