・ 中原side ページ22
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「それで『曽根崎心中』が発動。
私の『恋椿姫』で強制的に死をキャンセル、
其の影響で治は記憶喪失になり
私は傷の有る状態が固定されたまま」
「……手前、制御出来てないのか」
「いつもならまだ間に合うんだけどね。
今日で六日目。後一日で私は花と散る」
何故かうっとりと、恍惚とした表情で
頬に手を当て其の身を掻き抱くA。
「『恋椿姫』はね?
今世で叶わぬ恋が来世で実を
結びますようにという願いから生まれたの。
素敵よね…指先から花弁にほどけていくの…
人魚姫が泡となり消えていくように、
十二の鐘で魔法が解けるように、
私は____………………………中也、顔が怖いよ」
「…探偵社の奴等は、知ってンのか」
「『曽根崎心中』の解除方法が能力者に
直接触れること、発動しても生き残れたのは
私が『恋椿姫』を使用したから、
他人である限り私は探偵社に戻らない。
…遊戯のこと、背中の傷、期限の七日については
何も教えてないよ。乱歩には筒抜けだけどね」
「其処までする必要が何処に在る。
聞いてりゃ異能力者に会ったんだろ。
手前なら其の場で制圧出来た筈だ」
「意外と冷静だね中也。
もっと感情的になるかと思っていたよ」
心底、不思議そうに首を傾げるA。
其の首筋には目を凝らさなければ分からない程の
細い線が走り花の絵を描いている。
昔から、切り替えの早い…悪く言えば冷たい奴だった。
襲撃で人が死んでも、眉一つ動かさない。
面倒臭がりで余計な事はしない。
服にも拘りが無く着替えなくていいという理由で
休日は部屋から一歩も出ない。
酢豚のパイナップルは許せるが
苺の猪口齢糖は許せない。
反面、懐に入れた人間にはとことん甘い。
特に、愛された者に対しては尋常じゃなく甘い。
でも最近漸く分かってきた。
彼女は、愛された分だけ愛しているだけ。
「目には目で、身体には身体で、
愛には愛で返すのが私のやり方なの」
与えられるなら与える。
表に出るのが稀な為、気分屋に見えがちで
且つあの太宰から寵愛を受けるA。
舐めて掛かって其の毒牙に沈んだ者の多い事。
「…結局、手前の掌の上か」
「未だ始まったばかりだよ?」
悔しいが、Aの作戦に間違いはない。
何を企んでいるかだなんてきっと、
あいつにしか分からない。
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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時