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私と彼は腐れ縁。


私達の関係を表す名としては其れが一番近いと

思うのだけれど、彼曰く不服らしい。


「君は私を愛している。ならば


『恋人』と云うのが相応しいとは思わないかい?」


「…………は?」


或る日の昼下がり。


珍しく全員揃っており、

福沢さんも社長室から出て来ていて

依頼を完遂した乱歩を褒めていた時の事。


何の脈略も無く、何の前触れも無く、

唐突に彼は長椅子から起き上がってそうほざいた。


昼寝していた私の膝を勝手に枕にして、

読書の後に目を閉じていた彼は

鼻と鼻が触れ合いそうな距離で社内に響くには

十分な声の大きさで、そう抜かした。


膝から温もりが離れていくのでぼんやりと

起きた私は可笑しな夢を見たのかと思った。


「……………何だお前」


「私? 私は太宰治。幼馴染みで同僚で

君の__Aの、『恋ぶふぁっ」


「虹色の茸か?白い粉、逸れとも

未遂の果ての泡沫の幻覚を見たのか」


「だ、大丈夫かいA」


「いたたぁ…私の心配をしてよ与謝野女医」


「Aに蹴り飛ばされたぐらいがなんだい。


社長直伝だ、よく効くだろう」


「嗚呼…よく効いたよ此れは…」


雰囲気が変わったのを感じ取ったのか、

社長の眉間に皺が寄る。


分かっていない敦くんは

私の初めて見る蹴りに感嘆を向けたまま。


そんななか太宰がゆらりと立ち上がる。


本能的に危機を感じて長椅子から飛び退いた。


鉄線が、空を捕縛する。


伸びる先にはへらりと笑う彼。


「逃げられちゃった」


「___ッ異能力、」


「使わせないよ?」


「『しら」ピカッ!!!__


閃光弾?


直ぐ近く、目の前の敦君が発光して

一気に視界を奪われる。


「嗚呼……私の勝ち」


耳元で、そう囁かれて。


肩にかかる重み、焼けたように痛む背。


背後から抱えるようにして、

彼は私の頬に口付けを残す。


「私と死んで呉れ給え。愛しい人」


「……潜伏型だね。治には効かないから私か」


彼の左手が、私の首にかかった。


唯一動く目で、彼の瞳に浮かぶ魔法陣を見つける。


濁っているけれど、本気で殺そうとしていない。


未だ、間に合う。


「主は何処に居るのかな」


「心中しよう、A」


「太宰、貴様、」


「国木田くん、探偵社は頼むよ」


男女連続心中事件。


ほら、犯人が目の前で尻尾を振っている。

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名も知らぬ人からの微笑み


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6月の飴玉 - 様々な視点で描かれているので、とても新鮮でおもしろいです!! (2020年5月18日 12時) (レス) id: 913e8668f8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:梦夜深伽 | 作成日時:2019年7月9日 16時

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