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モデルを引き受けてからは、本当に忙しくて。
俺の身長、ウエストを測って、服を調整して、写真を撮って…
本当にこれ、一週間で全部終わるのかって量だったけど、驚く程の手際の良さで三日で済ませて、提出までしていた。
…実は凄い人なのでは?A先輩。
ウォーキングの練習も、最初は難しかったけど、だんだん慣れてきて。
「小瀧くん凄い!プロのモデルさんになれるよ!」って先輩に褒められるから、もっと頑張ってしまう。つくづく自分は単純だと思う。
たまに他のモデルの人にも会うことがあるけど、みんなかっこよくて、俺なんかでいいのか、と不安になる。
でもそんな弱音吐いてたらみっともないよな。と思って、先輩には言わないでいる。
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そして、本番を迎えた。
きらびやかなステージ、内臓まで響いてくる音楽。
そして俺は緊張で吐きそう。
「小瀧くん」
「はいぃ!?」
変な声が出た。
先輩、笑ってるし。
「そんなに緊張しないでいいよ、大丈夫!」
「先輩」
「なに?」
「本当に俺で良かったんですか」
「…何言ってんの、他にいい人がいたら、小瀧くんにあんなに猛烈にアタックしてないでしょ?
大丈夫、ここにいる誰よりも輝いてるから」
そんなこと言われたら、本当に好きになっちゃうやんけ。
実は、一つ言おうと思ってたことがあった。
「先輩」
「はーい?」
「このファッションショーで俺と先輩が一位を取ったら、一緒にランウェイを歩いてください」
「…えっ」
「一位取ります。先輩の服、めちゃんこいけてるやん!」
「…小瀧くん…!」
そして、俺の番。
出る前に、先輩から耳打ちをされた。
「一位取ってくれたら、私からも言いたいことあるの」
えっ、待って!ちょっ!直前に爆弾投下しないで!
「エントリーナンバー7番、Aデザイン!モデルは、小瀧望!」
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作者名:とらい | 作成日時:2019年5月15日 21時