居酒屋妄想日記 ５冊目

頼る、甘える ページ7

〆．



「ご、ごめんなさい！」



出血量は相当だったらしい。



大毅くんの腕についてしまった血を拭き取ろうとすると、それを制される。



赤「なんで黙っててん！？」



「そ、それは、」



痛みだけでやって来れたから、そこまで酷い傷でもないと自己判断した。



立てないほどでもなかったし……。



赤「神ちゃん、止血！」



緑「わかった。どこ怪我した？どこ痛い？」



ともくんは真剣な顔で、それでも優しく聞いてくれる。



けれど、どこが痛いかすらわからない。



首を振ると、ともくんは困った顔で、



緑「脱いでくれるか？」



と私の顔をのぞき込んだ。



緑「脚全体見たいから。ごめんやけど…」



「いえ、大丈夫です…」



やっぱり小刻み震える体をなんとか動かし、痛みに耐えつつスキニーを脱ぐ。



太もも半分より上は、ともくんがパーカーを貸してくれたのでそれで隠す。



緑「うん……傷は深くないけど、量が多いな。



ごめんやで、痛い思うけど」



止血と消毒、そして絆創膏を貼るのを手際よくやってくれて、少し気持ちが楽になった。



赤「はー……Aはほんまもんのあほや。頼れって言うたのに…」



「でも……」



赤「でも、やないねん。俺の知らんとこで傷つくな」



心も、体も。



大毅くんの弱々しい声は、私の胸を締めつける。



「すみませんでした…」



緑「もー、落ち込まんの。しげも元気出し！」



ともくんが、履いてきたハーフパンツを貸してくれた。これなら履きやすいだろうって。



その代わり、ともくんはバイト用のダメージジーンズで帰ることになったけど……。



緑「ちょっと調味料とか飛んでるけど、外で着てておかしいもんやないからな」



そう笑ってくれた。



この二人には、感謝してもしきれないなぁ。



「本当に、ありがとうございます」



緑「ほんまに感謝してんなら、これからは素直に甘えてくれたら嬉しいな」



赤「ほんまやで！な？」



「うにゅ……ほっぺた引っ張らないでください〜」



赤「ひゃひゃひゃ！びよんびよーん♪」



さっき助けてくれた人と本当に同一人物？



大毅くんは掴めない人だなぁ……。



そこが、大毅くんの魅力の一つなのかもしれないけどね。



〆．

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