居酒屋妄想日記 ３冊目

お誘い、唐揚げ ページ15

〆．リクエスト



昨日の大毅先輩、可愛かったな〜。



なんてバイト中にほわほわ考えてたら、照史さんが声をかけてきた。



橙「A、明日暇？」



「え？あ、はい！」



橙「ちょっと出掛けへん？」



「えっ！？」



橙「デート。ど？」



いたずらっぽい笑みに、惹かれる。



「はいっ！」



橙「はは、嬉しいわぁ。そんなええ顔して言われると、期待してまうんやけど？」



ぽんぽん、と頭に優しく乗る温かい手。



ああ、照れくさくて、なんだか心地いい。



「……期待、してもいいです」



ぼそっと呟いた声。



流石に照史さんには聞こえなかったようで、「ん？」と聞き返してくる。



「いえ！なんでも！」



言っちゃった方が楽かもしれない。



ちゃちゃっと待ち合わせの場所や時間を決めて、すぐ仕事に戻る。



緑「A、ちょっと味見してみて〜」



「え、なんですか？」



緑「唐揚げ、ちょっと味付けに秘伝の調味料を…」



「ええっ、食べたいです！」



緑「はい、あーん」



「あ、あーん…」



恥ずかしい……。



「………っ、え！？美味しい…！」



緑「良かった〜」



「秘伝の調味料……だから、教えてもらえないですよね…」



緑「せやな、これはAでも教えられへんなぁ。……この味が食べたいなら、俺とそういう関係になってもらわんとな」



「食べ物で釣るんですか。……あーでも、それもいい…」



智洋先輩の美味しいご飯を一生食べ続けることができるなんて。



「……って、早速アピールですね」



緑「そりゃあな？一番にAの気持ち知ってんもん。これくらいのフライング、良くない？」



「まあ………そうなんですかね」



どうして、サラッとそういうこと言えちゃうのかな。



緑「美味しい言うてくれてありがとうな」



つんつん、と智洋先輩の人差し指が、私の唇をつつく。



「またそういうこと……」



視線を逸らすと、照史さんの姿が目に映った。



橙「………………」



なんとも言えない顔をしている。



「あ……照史さん？」



橙「いや………A、明日はよろしくな」



優しい笑顔は、ぎこちなく見えた。



………照史さんも、私に好意を寄せてくれている。



うえすとのみんなの前で他の人と仲良くするのは避けた方がいいのかな。



でも、それは寂しい……。



恋って、難しいなぁ。



〆．

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