やさしいお隣さん ページ2
「…あの、ほんとにいいんですか?」
「いいよ。隣同士なんだし。疲れたんでしょ?」
阿部さんの声は、あまりに穏やかで。
まるで眠り薬みたいに、安心を植えつけてくる。
――気づけば私は、お隣の部屋で。
テーブルには缶ビールが二つ並んでいた。
「未成年じゃないよね?」
「……二十歳です」
「そっか。なら乾杯」
缶が軽く触れ合う音。
シュッと開けた瞬間に広がる炭酸の香り。
私は緊張を紛らわせるように、ごくごくと喉に流し込んだ。
阿部さんは――。
不思議なほど、飲まない。
口をつけては置く。
私が飲み進めるのをただ、静かに見ていた。
⸻
「最近、テレビ出てるよね。すごいなぁ」
「……大変ですけどね」
「ファンが多いでしょ?街歩けないんじゃない?」
「いや、そんなことないです。
…みんな勝手に盛り上がってるだけで、正直チョロいなって思うこともあります」
気づけば。
いつの間にか私は愚痴を漏らしていた。
配信では絶対言えないような、本性を。
「ほんとはね、視聴者なんてちょろい。
笑ってれば金投げてくれるし」
「……へぇ」
「まぁ、演じてるだけなんですよ、私」
阿部さんは相槌を打つだけ。
けれど、その目は笑っていなかった。
⸻
やがてアルコールに負けて、頭がぐらぐらする。
言葉も途切れがちになり
――私はテーブルに軽く突っ伏した。
「……、ねむ……」
視界が暗くなっていく。
けれど最後に聞こえたのは、阿部さんの低い声だった。
⸻
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作者名:ソーダ。 | 作成日時:2025年12月13日 9時


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