優しさに包まれて【宮治】 (ページ17)

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治｢Aさんも、ちゃんとかっこええよ｣

治｢自分のやるべき事を責任もって最後までやり遂げようとするAさんはほんまにかっこいい｣

真っ直ぐ私も見つけてそう言う治くん。

その表情から本気で言ってるんだと伝わってくる。

その言葉だけでも今まで頑張ってて良かったなぁって心の底から思えて

胸が熱くなった。

その瞬間治くんがギョッとして目を丸くする。

治｢えっ？！ちょ、俺なんかまずいこと言ってしもた？！｣

焦りながらカウンターからこちらに回ってきた。
今までに見た事ないくらいの焦りよう。

『え、どないしたんですか？』

治｢どうしたもこうしたもないねんけど！

なんで泣いてるん…！｣

彼からそう言われてようやく気づいた。
私の瞳からはポロポロととめどなく涙が溢れ出ていて膝の上で握り締めていた拳に落ちて濡らしている。

こっちの支社に来て半年、毎度任されることは新しいことばかり。上司からの期待。絶対にミス出来ないという重圧。責任。
帰宅すればいつも時計の針は午前0時を指そうとしていた。

自分が思うよりも、仕事という存在が私の中で重荷になっていたのだと気づいた。

そして無意識に涙が出てしまうほど彼の言葉は今の私を癒すには充分過ぎたのだと自覚する。

『ありがとうございます治くん。そう言ってくれたのは治くんが初めてです。ほんまに嬉しい』

今とんでもないくらい酷い泣き顔だろうけど、そう言ってめいっぱい笑ってみせる。

その瞬間私の顔を涙とは別の温度が包み込む感覚がした。

『へ、』

その状況を理解するのに少し時間が掛かった。

治くんが眉を下げながら大きな大きな両手で私の顔を包み込んで、私の目からとめどなく流れる涙を親指ですくってくれている。

治｢Aさん、よう頑張ったなぁ。沢山泣いとき。秘密にしといたる｣

『おさ、むくん、』

その言葉がトドメだった。
少し引っ込みかけた涙がまた溢れるように零れる。

すくうのが追いつかなくなった治くんは自然と私を抱きしめ、優しい手つきで頭撫でてくれた。

頭の中がぐちゃぐちゃの私は治くんに身を任せ、肩に顔を埋め、背中に手を回しシャツを握ってただただ泣く事しか出来なかった。