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治side



目の前で目を点にして固まるAさんを見てハッとした。



俺は何言うてるんや。



ツムと角名だけ言われるのが何故か気に食わんくて、かっこいいて言われたいなんて子供みたいなことをつい口走ってしまった。



治「ご、ごめんAさん!!今のは軽い冗談で」



『………ですよ』



治「……え?」




咄嗟に謝る俺を遮るようにAさんが何かを呟いた。
俯いていて表情が分からない。



『かっこいいですよ!治くんは!』



途端にバッと顔を向けてそう言ったAさんは今まで見た事ないくらい真剣な顔をしていて



『食に関して人一倍に熱意が強くて、少しでもお客さんに喜んでもらおうと試行錯誤して、誰にも作れない世界に一つだけのおにぎりを作ってる治くんは、本当にかっこいいです』




『あの日だって、閉店間際なのに見ず知らずのゾンビみたいな私を救ってくれた治くんは


間違いなく私にとって世界一かっこいいヒーローでしたよ!』




そう言って満面の笑みを咲かせるAさんに俺の胸は高鳴りを覚えた。


嬉しくて嬉しくてたまらなかった。



『惨めに社畜なんかしてる私より、治くんはよっぽどかっこいいです…』



するとさっきの表情から少し眉を下げて笑う彼女。

そういえば、Aさんが初めてここに来た時も仕事帰りでかなり夜遅く、そして疲弊していた。


東京支社からこっちに移動させられてまだ半年なのに、色んな新しい仕事を任されてるて前に言うてた。


相当な苦労をしているのだろう。



それでも彼女は『大変だけど、でも、今の仕事にやりがいを感じとるんです』と言っていた。




治「あのな、Aさん」



『はい?』




勘違いせんで欲しい。





治「Aさんも、ちゃんとかっこええよ」





そんなAさんがかっこよくないわけが無いやん。

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作者名:るた | 作成日時:2021年10月12日 0時

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