It's too late

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「Aさん、顔色、悪いですよ、大丈夫ですか？」
「ああ、うん、ちょっと寝不足なだけ。大丈夫、ありがとう。」
「じゃあ、お先に、失礼します。お大事に！」


入社して、がむしゃらに働いて、気がついたら周りは後輩か、おじさまばかりに。本社の、この部署に配属になって、やりがいを感じる反面、プレッシャーもある。

3年の韓国赴任から戻ってきた今、同期入社の女子で残っているのは、わたしとハナと、経理のなっちゃんと…地方の地元に配属された人たちだけ。

みんな、適当にいい人をみつけて寿退社だ。このご時世に珍しい。

産休明けで帰ってきた先輩のご主人は、とても育児に積極的な人らしく、ご主人の方が育休をとってくれたそう。

制度は充実していて、産休もしっかり取れることは間違いないのだけれど


「何て言おう…」
「何をよ」
「ハナ！」


思わず漏れた独り言が、突然現れたハナによって拾われる。まったく、びっくりするじゃない。


「妊婦がこんな時間まで働いて大丈夫なのー？」
「今日は、まだ、調子いい方だから」

できるときに、やっておきたいの。


「それで？今度はなに悩んでんの。まあ、今は悩みばっかりだと思うけど」
「悩みばっかりって…まあ、そうだけどさ。産休、申請しないとなって。」
「ああ」
「けど、」
「けど…?」
「何て言えば、いいのか分からなくて」


まだ、両親にも話していないのに、会社に何て言えばいいのか…。

「出産するんで、休暇ください。産後は復帰します。で、いいんじゃない？」

あっぱれだ。確かに事実を簡潔に述べてはいるけれど、

「え？結婚は？ってなるのが目に見えてる」
「でも、言わなきゃでしょ」
「うん…」
「はぁ…じゃあ、会社辞める？」
「それは無理！」

今の仕事好きだし…それに、仕事辞めたら、二人の子ども、育てられない。

「じゃあ、チャニョルに全部話して、養育費貰えば」
「それは、もっと無理」

そんなこと、できない、したくない。お人好しのあの人のことだから、きっと、そうしてくれると思うけど、わずかなプライドが許さない。

「まあ、安定期までには考える」
「A、」
「お母さんの不安って、赤ちゃんにも移るんだって。わたしがこんなんじゃ、きっと、産まれてくる子どもたちも、不安になっちゃうと思うの。」

だから、泣かない。

「とにかく、おじさんたちには早く話しなよ。私は何があっても、Aの味方だから。」
「うん…ありがとう、ハナ」

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