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岩本が弱々しい目を向けるのを嘲笑って、阿部は抱えていた思いをぶちまけた。
ab「お前がふっかに出会う前から俺はふっかと友達だった。俺にとって初めての＿＿唯一の友達だったの」
阿部は小さい頃、自身の能力を上手く制御出来ずにいた。そのせいで意図せず他人を操る事が多々あり、自ら「異端」だと白状するような生活を送っていた。
おかげで他より早い段階から陰湿ないじめを受け、友達など一人も出来ずに孤独な生活をしていた。
そんな時、阿部に手を差し伸べたのが深澤だったのである。
ab「ふっかがいたから、俺はどんなに辛くても一生懸命生きようって思えたの。そうじゃなかったらとっくに死んでた」
阿部がどれだけいじめられても深澤だけは阿部の傍にい続けてくれた。
卒業後の進路が違ったせいで離れ離れにはなったが、それでも阿部にとって深澤はかけがえのない存在だった。
阿部と離れたその後、深澤は岩本と出会い、そして。
ab「ふっかのおかげで俺は救われたのに……お前がふっかを壊したから……!」
久し振りに会った深澤が変わり果てていたのを見て、阿部は酷くショックを受けた。
昔はあんなに優しかったのに。人なんて殺せないような優しい性格だったのに。
しかし、しばらく深澤の傍にいてわかった。彼は、全ての凶行を岩本という人間のためにやっていると。
ab「お前のせいで……お前のせいでふっかが壊れたんだよ!!」
そうわかってからは阿部も深澤の目を覚まさせようと努力した。しかしだめだった。
深澤は阿部の説得に耳を傾けなかった。阿部の能力だって、長年の付き合いがある深澤には効果がない。
傍から見てわかった。深澤を止められるとしたら発端である岩本だけ。それなのに。
ab「お前がふっかを壊したのに……お前しかふっかを止められないのに……なのにお前はどうした! 逃げただろ!?」
深澤を止められるのは岩本だけなんて言われても、実際岩本だって止められなかったのに。
岩本はじっと阿部の目を見つめるだけ。阿部に何か言い返す権利など、今の岩本にはない。
ab「……だから俺は決めた。ふっかを止められないなら、俺は永遠にふっかについて行こうって。ふっかが地獄に行くなら、俺だけでもふっかと一緒に地獄に行こうって」
阿部が深澤に対して抱く感情は、普通の友達への感情よりもずっと重く、恋愛感情なんて陳腐なものよりもずっと純粋で、岩本が深澤に対して抱く感情よりもずっと強いものだった。
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作者名：怜
| 作成日時：2020年11月16日 20時
