監視対象は純黒の悪夢を見る【名探偵コナン】

69.これはきっと悪夢 ページ35

何分か経って救急車が到着し、キュラソーの遺体が運ばれていく。
野次馬から見られないようにシートをかけられていて目では容態を確認できなかったので見に行こうと駆け寄ったら、救急隊員の人には身元が判別できない状態なので見ない方がいいと言われてしまった。

きっとキュラソーは……。

「……っ」

彼女にまともに顔向けできなくて、見ていられなくて、拳に力が入り震える。

私、超能力者でしょ？なのに何も……何もできてないじゃん。
クレーン車に乗るのが私だったら、もしかしたら止められたかもしれないのに。

初めて自分の目の前で死者が出てしまった。今まではそんな事態が起きないようになるべく対処していたのに。
自分の不甲斐なさに胸が締め付けられる。

「もしかして貴方……ギブソンじゃなくて＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿オリジナル(・・・・・)？」

彼女に言われた言葉がリフレインする。そういえばあの事についても聞けなくなってしまったな。
ギブソンか……。

「はぁ……」

この後の事を考えると気が重くなる。1日にこんな沢山の事
が起きて、これが現実だなんて信じられない。
いっそ全部悪夢だったらいいのに。起きたら全部無かったことになればいいのに。

「葵お姉ちゃん、大丈夫？」

気がつくと、コナン君が隣にいて声をかけてくれた。

「……あぁ、ごめんね。うん、怪我は平気だよ」

「そうじゃなくて、凄く暗い顔してたから」

うん、分かってる。それで君は心配して声をかけてくれたんだよね。

私はパッと切り替えて彼に笑顔を見せた。

「えぇホント？もう夜だしそう見えちゃっただけじゃない？あ、そういえばコナン君もこの観覧車止めてくれたんだよね？凄いじゃん、ありがとうね」

「えっ、う、うん」

コナン君は何か言いたげだったが私は気づかないフリをした。



***



ホイールの1つが外れた観覧車が見える。その真下には担架で運ばれていく遺体。おそらくキュラソーだろう。

彼女の死を目視で確認できたところで耳に着けたインカムのマイクをオンにして小声で呟いた。

「キュラソーの死亡を確認、これより撤退します」

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