【黒子のバスケ】未来へのキセキ XⅠ (ページ38)

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第538Q 再演ページ38

試合で大差がついた時、バスケットほどつまらないスポーツはない。

確率のスポーツとも呼ばれ即ち点差はほぼそのまま実力差であり短時間で一気に大量得点できるような術もない。

試合終了のブザーがなる前に決着は着いたも同然となりその後のプレイは勝敗にほぼ関係ない。

そうなれば席を立ってしまう観客もいるだろう。

逆にだからこそバスケットほど接戦がスリリングなスポーツもないと言えるが。

決勝戦が必ずドラマチックになるとは限らない。
大本命が呆気なく勝つのもまた決勝戦。

＿＿＿＿＿＿最早完全に心は折られた。
希望の光は全て消えた、誠凛はもう立ち上がれない。

誰もがそう思った。

誠凛ベンチでは誰一人もう声も掛けない。
リコや降旗達はAの応急処置に追われる。

「(女子用のボールではなく男性用ボールを使っていたことからのオーバーユース。腱板損傷かもしれない。この先コートに戻ることは…)」

「リコさん…テーピングお願いします。まだ…まだ……」

そんな時、黒子はふと自身の両手を見つめた。
腕につけられたリストバンドは未来と過去の証。

＿＿＿＿＿＿「バスケットはもう辞めます。」

＿＿＿＿＿＿「とっくに仲間だろーが！」

＿＿＿＿＿＿「バスケットをやっていてボクは本当によかった。」

誠凛メンバーとの出会いは、今日まで黒子にとって希望の光だった。
そして、ここまで戦う勇気と意志をくれた彼の言葉がずっと谺する。

＿＿＿＿＿＿「オレはあの氷のような眼に手も足も出なかったけど、
黒子ならまた必ず立ち上がって氷を溶かすのともきっとできる。」

ぽた、ぽたと手に落ちた雫。
落とした主は他でもない黒子であった。

「……いやだ、勝ちたい…………」

小さな声が沈黙の中、全員の鼓膜を震わす。

「ボクは……！勝ちたい！！無理でも…！不可能でも！みんなと日本一になりたい！！」

心からの彼の叫びは誰かに届くだろうか……否、しっかりと届いた。

悪戯っ子のようにAは笑い、「行ってこい」と彼の肩を叩いた。

「……カントク、お願いします。」

タイムアウト終了後、負傷のAと代わりコートへ戻ったのは全員予期しなかった選手であった。

バスケットほどつまらないスポーツはない。

＿＿＿＿＿＿だがそれはここで終わればの話。

コートに戻ったのは黒子であった。