″もしも″から″本当″へ ページ17
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白い少年を見つけた。
死にかけた彼は私を死神と呼ぶ。
Aが死んでから気がつけばもう数百年。
奈落に戻ってきた私には、茫洋と過ごしてきたせいかとてもはやく感じた気がする。
いや、案外そうでもなかったかもしれない。
面影が重なってゆく。
似ても似つかぬものだと言うのに。
白い髪が、赤い瞳が。
彼の持つ色はどうしてもAを呼び起こす。
あの時は知らなかった。
自分の血に他のものを治癒させる力があるなんて。
もし知っていたら、Aを助けられたのに。
後悔してももう遅い。
私の血には延命や治癒を出来ても死者の蘇生は出来ないから。
でも、でもこの少年は救える。
Aと同じ色を持つこの少年は救うことができるのだ。
手首を切った。
血が溢れてくる。
ああ、その血を君へ。
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一番弟子が死んでから、どれくらいたっただろうか。
思えば私は失ってばっかりの人生を送っているような気がする。
永遠を生きる身としては仕方の無いことだけれど。
「屍を喰らう鬼が出ると聞いてきたんですが」
そこには白い少年がいた。
死ぬ前の朧と丁度同じくらいの。
「君が、そう?」
どうも私は色のない人々に縁があるようだ。
いや、どれもこれもAが結んでくれたんだろう。
名前のない彼には坂田の性をあげよう。
私の愛した、いや、愛している人の性を。
名前は…そうだなぁ。銀時がいい。
Aが私の名前を決めてくれた時のように、私もこの子には直感で付けよう。
結構馬鹿に出来ないものですよ、直感は。
子供たちの笑い合う声が聞こえる。
たまに怒声も飛んでいるけど、楽しそうなので目をつぶろう。
どうせいつものように銀時と晋助が喧嘩しているのだろうから。
ああ、幸せだ。
この時は何にも変え難い。
隣に誰かがいる幸せ。
誰かと笑い合える幸せ。
誰かと喧嘩できる幸せ。
誰かを抱きしめられる幸せ。
全部Aが教えてくれた。
いつかあの子達に話して聞かせよう。
二十年間を必死に生きた
絆を紡いでくれたたった一人の女の話を。
金糸梅が庭に咲いていた。
梅のような黄色い花を見る度に、私は思い出すのだ。
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レイレイン - 素敵な話ですね。とても感動しました。ありがとうございます。 (2021年4月19日 20時) (レス) id: 5a04a92c31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2019年4月1日 16時