い ページ5
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雨のおかげで昨日より幾ばくが涼しくなった気候に、
静かに息を吐いた。
適当に侵入した廃屋は、思ったよりもしっかりしており、雨をしのぐをという目的は完璧にこなしてくれそうで。
久方ぶりに肩の力を抜いてコンクリートむき出しの壁に背中を預ける。
常ならひんやりと冷たいはずのそれも、八月の蒸し暑さによって生暖かい。
刀を抱いて、目を閉じた。
存外自分が思っていたよりも疲れていたようで、だんだんと意識が遠くなっていく。
「……総督!」
「あ、見てくださいよ、総督。大砲を改良したんすけど……」
「高杉さん、置いてかないで下さいよー」
ああ。
「今の総督じゃムリっすよ。俺達が行きます」
「ほら、目の傷口から熱も出てるんでしょ?」
「大丈夫ですって、今のうちに行ってください」
「ええ、必ず追いつきますから」
ああ……
「晋助」
「あぁぁぁぁあ!」
はぁはぁと、自分の息の音がうるさい。
ひとつしか残らなかった右目をこれでもかと見開いて、俺は飛び起きていた。
混乱するのを深呼吸で落ち着かせる。
「はぁ、はぁ……ックソ!」
ガァン!と壁を殴った音が、広いコンクリートにこだまする。
「俺にゃぁ夢見る資格すらねぇんだぞ!クソが!」
怒鳴り声が、雨音に掻き消されて消えていく。
「くそが……」
思わず両手で顔を覆って、丸めるように体を曲げる。
雨の日は、ようやく塞がりかけた、右目が、痛む。
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沖田レイア(プロフ) - まめさん» まめ様!ありがとうございます!今日はみんなで晋助様のお誕生日をお祝いしましょう! (2020年8月10日 17時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 凄く高杉さんへの愛を感じました。。 泣きました。とても良い作品をありがとうございます! (2020年8月10日 11時) (レス) id: 857664c7be (このIDを非表示/違反報告)
沖田レイア(プロフ) - Sakura様……!なんと早いコメント……!ありがとうございます!すごく嬉しいです! (2020年8月10日 0時) (レス) id: b13dceedcd (このIDを非表示/違反報告)
Sakura(プロフ) - めちゃめちゃ感動しました…!!!!!素晴らしい作品をありがとうございますッッ (2020年8月10日 0時) (レス) id: 321ab1938b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沖田レイア | 作成日時:2020年8月10日 0時